[シャンバラ]
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最終日、女は最早、呼吸法も瞑想もままならない状態だったようだ。
瞑想の途中で覆い被さってきた女に俺は応じた。
女と交わっていると、突然、今までに感じたこともないような快感に襲われた。
快楽から引き離してあった俺の理性が、女に房中術の「導引」を仕掛けられたことに気づいた。
俺は快楽に逆らって女の体から自分の身体を引き剥がした。
そして、再び女に乗り掛かると、体力が限界に達するまで「導引」を仕掛け続けた。
やがて体力の限界に達し、女の中に大量に放出した俺は女から離れると床の上に大の字に横たわった。
失神していたのか、女は死んだように動かなかった。

体力が回復すると俺の体は驚くほど軽く、力が漲っていた。
あれ程俺を苛んでいた情欲の炎も冷めていたが、気力や霊力は充実し切っていた。
横たわる女を置いたまま、俺は当てがわれていた自室へと戻った。

俺は全裸でベッドに横たわったまま気を整えていた。
暫くするとドアをノックする音がして、部屋に女が入ってきた。
山佳 京香だった。
京香は着ていたガウンを脱ぐと無言で俺の身体に唇と舌を這わせ始めた。
京香の口技は風俗嬢顔負けのテクニックだった。
やがて、俺の上に跨り身体を沈めてきた。
ゆっくりと腰をくねらせながら深く身体を沈め、強く締め付けながら吸引力を強め、亀頭の位置まで引き抜く腰使いは堪らなかった。
「導引」を掛けながらの京香の腰使いに、素の状態の俺ならば耐え切ることは出来なかっただろう。
だが、俺の気力は先ほどの女から奪った精気によって充実していた。
更に「気」を整えて、精神的に極めて冷静な状態にあった。
情欲や快感に溺れて頭がピンクに染まった状態でなければ「房中術」は成功しない。
京香が「息」をつき、「導引」が途絶えた瞬間に俺は攻勢に転じた。
俺は京香を攻め立て頃合を見て「導引」を仕掛けた。
京香は抵抗したが、不発に終わった「導引」の疲労や、元々の体力差からやがて俺の軍門に下った。
どんなに修行を重ね、若々しい容姿や肉体を保っていたとしても、所詮は還暦目前の初老の女に過ぎないのだ。

俺は体力の限界を超えて導引を仕掛け続けた。
性エネルギーを根こそぎ引き抜かれた京香の快感は凄まじいものだっただろう。
俺は「導引」を止め、京香の中に大量に放った。
ピクリとも動かない京香を見下ろしながら俺は思わず独り言を呟いた。
「若作りしていても、ババアはババアだな・・・」
大量の精気を抜かれた為だろう、京香の肌からは先ほどまでは溢れていた瑞々しさが失われていた。

やがて、俺の体の下で京香が目を覚ました。
俺は京香の中で硬さを取り戻したモノを再び動かそうとした。
京香は「もう止めて!」と叫んだ。
俺が京香の中から引き抜くと、彼女は俺に言った。
「アンタ、何者なの?」

俺は答えた。
「アンタが壊した松原 正志の縁者と崔 京子に雇われた拝み屋・・・見習いだ」
更に続けた。
「アンタ達はお互いに房中術を掛け合って、時には気力や霊力の強い人間から精気を奪い取って瞑想を行っていたんだろ?
他人の精気を奪って、怪しい薬物を使って得た神秘体験とやらはそんなに素晴しいものなのかい?」
京香は答えた。
「ええ、何者にも代え難いほどにね。頭の固いグルは持戒だ功徳だ、薬物に頼らなくても神秘体験は得られるだのって言うけどね・・・
辛気臭い生活を一生続けても、シャンバラを覗ける機会は一生に一度有るか無いかじゃない?
房中術に秘薬・・・確かに反則かもしれないけれど、到達点が同じなら合理的にやったほうが良いとは思わない?
それに、房中術で精気を貰った人も、普通では感じられない物凄い快楽を得た訳じゃない?
まあ、快楽に溺れて破滅しちゃう人が殆どだけどね。
快楽に溺れるのは本人の勝手。松原君もいいモノを持っていたんだけどね・・・アンタと違って修行が足りなかったようね」

京香は更に続けた。「それに、そう言うアンタも余り偉そうなことは言えないんじゃない?大分ご乱交を重ねてきたみたいだけど。
アンタのそんな所が気に入って『特別コース』にお誘いしたんだけどねw」
「他心通・・・いや、宿命通かい?」
「あとは天眼通もね。天耳通は・・・あんた、いっつもインストラクターや女の子達の胸やお尻を見て助平な事ばかり考えていたから、聞くに堪えなかったわw」
俺は頭を掻きながら京香に言った。
「なあ、アンタにぶっ壊された松原 正志にアンタの娘、アンタらが食い散らかした元会員や援交のガキ共は皆、質の悪い憑物に纏わり付かれているんだ。
だから、俺たちみたいな拝み屋が出張って来る事になったんだが、何故だと思う?」
京香は「そんな事、知らないわよ」とぶっきらぼうに答えた。
俺は「それじゃあさ、お得意のクスリをキめてぶっ飛ぶインチキ瞑想で、いつものようにシャンバラとやらを覗いてきてくれよ。
精力が落ちて難儀しそうだが、アンタはそこに繋がっているんだろ?
ヤバそうだったら、ええっと胸から気を入れればいいんだっけ?しっかりフォローしてやるからさ。
首尾よくシャンバラに行けたら、俺の負けだ。
さっきの続きを楽しもうぜ。好きなだけ気を抜かせてやるから。
俺も嫌いじゃないしね」
京香は全裸のまま呼吸法を始め、気が満ちて来るとピンク色の怪しい錠剤を飲み下した。
やがて彼女の呼吸は浅くなり、体温や心拍は下がって行った。

続く