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[鈴木]
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土嚢に登れば裸電球を点灯させることもできるし、嵌め殺しの窓もある。
その下は橋の常夜灯からの明かりも差し込んでいた。
俺はすかさずその場所を確保し、座り込んだ。
そして我慢比べと覚悟して、だんまりを決め込んだ。
田中はタバコに火をつけ、夜目に慣れた頃、口を開いた。
「山田の先輩って知ってるか?」
「さあね」
「ここに彼女連れ込んでやったとか言ってたよな。何してたのかね」
「アホか」
田中も静寂や暗がりが怖いのだろう。
だが、ここで普通にだべっていては勝負にならない。
俺は意地を張って田中を無視した。
「たぶんこの上にシートか何か敷いてやったのかな」
田中はすっと立ち上がり、辺りをライターで照らした。
部屋の中には大と小の土嚢のブロックがあり、その間が通路になっている。
小さなブロックの方が窓側で、俺らはその上に腰掛けていた。
なぜか傍らに、蛇のようにドグロをまいたロープがあった。
「こっちの奥には何があんだろう」
田中は土嚢の間を注意深く歩き始めた。
信じられない行動だった。俺は取り残される恐怖に怯え、思わず後を
追おうとした。頭の中には、死んだホームレスのことしかなかった。
何かあったらすぐ田中の方へ逃げられるよう、俺は腰を浮かして恐怖に耐えた。
「おーい、線香があったぞ」
暗がりにぼんやり見えていた山田が、突然姿を消したかと思うと、間延びした声
をあげた。
「蚊取り線香だけどなあ」
「最近誰かが入り込んだのかなあ?」
田中は恐怖よりも性欲が勝っているらしい。
信じられない想像力だった。
「おいおい、コンドーさんの袋があるぞ」
俺は自らの負けを確信した。
「あいつ○○中だよな。うちの高校あそこ出身の可愛い子っていたっけか」
田中の質問に答える余裕はなかった。
「・・・そうだよなあ。可愛い子は○○女子に行っちゃうんだよな」
俺は田中の姿を確認するので精いっぱいだった。
「でもD組の○○、あいつ確か○○中だろ。けっこう良くねえ」
ライターを点火するたび、あいつの姿が浮かび上がる。
「体操着の胸のあたりとかな」
話し振りに、ちょっと違和感を覚えた。
「おいっ!おまえ誰としゃべってんの?」
うあああああああああ
一瞬沈黙があり、田中がわめいた。
土嚢の陰から飛び出すと、こちらを無視して、いきなり扉に体当たり。
建付けが悪かったのか、その引き戸は簡単に外れた。
街灯が部屋の中を照らし、俺はその奥にちらっと視線を送った。