[和解]
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翌日、俺はきょうこママを呼び出してアリサの説得に掛った。
アリサの抵抗は激しかったが、
ママの「このままじゃ何の進展もないでしょ?行きなさい。行って恨み言の一つでも言ってやりなさい」の一言でしぶしぶ折れた。
ママは俺に「アンタも行くのよ!」と言った。
俺達は、ママに借りた車でアリサの実家を目指すことになった。

出発間際に、ママは俺の胸倉を掴んで「アンタとアリサを一緒に行動させているのは、何もエッチさせようって訳じゃないんだからね!
判ってるだろうが、女の涙を拭うのは男の仕事だよ!しっかり、いい仕事するんだよ!」と言った。
更にママは、「判ったよ」と言って、アリサが助手席で待つ車に向かおうとした俺の肩を強く引っ張った。
そして、耳元に顔を近付け、「ところで、実際、アンタ達どうなんだい?ヤッたのかい?」と言い、
「何言ってんだよ、そんな訳ないじゃん」と答えた俺に、
「フン、このヘタレ!しっかり根性入れて、そっちも頑張りな」と言って、グローブみたいにデカイ手で俺の背中を叩いた。

俺は車を走らせ、北に向かった。

高速を降りて国道を暫く行くと、アリサの実家の在る街に入った。
地図によれば、もう町内に入っている。
俺は、実家の詳しい位置を聞こうとアリサの方を見た。
アリサは酷い脂汗をかいており、浅く激しい呼吸で苦しそうだった。
その頃の俺はPTSDという言葉は知らなかったが、アリサの症状はまさにそれだったのだろう。
俺はダッシュボードからビニール袋を出し、アリサにその中に呼吸させた。
過呼吸の応急措置だ。
呼吸が落ち着いたアリサは、震える手で俺の腕を掴み「行きたくないよぉ」と言った。
「それじゃ、とりあえず俺が一人で行ってみるから、アリサは車の中で待ってて」
車を止めたコンビニのレジで道を聞き、買ってきた飲み物をアリサに渡した。
俺が「行って来る」と言うと、アリサは俺の手を握って「早く帰ってきて」といった。

アリサの実家は簡単に見つかった。
同じような大きめの民家の並ぶ通りの一角に星野家はあった。

インターホンを鳴らしたが中から応答はない。
留守か?
もう一度、ボタンを押していると近所の主婦らしい中年女性に声を掛けられた。
「星野さんに御用ですか?」
「はい。でもお留守みたいで。お帰りになられる時間とかわかりますか?」
「星野さんの奥さんは入院中だし、お兄ちゃんは出て行っちゃったし・・・だれも居ませんよ」
星野家は、近所でも余り評判の良くない一家だったらしい。
アリサの祖母が亡くなってからは、引き篭もりだった兄の家庭内暴力は近所でも噂の種だったそうだ。
アリサの兄は、母が倒れてからすぐに家を出たようだ。
アリサの母は、倒れてからもう半年近く入院したままなのだという。

俺は主婦にアリサの母の入院先を聞くと、車に戻り「お母さんは今入院中だって。お兄さんはお母さんが入院してすぐ家を出たらしい。
お兄さんは居ないから大丈夫。病院へ向かうよ?」
アリサは見るからに嫌そうだったが、俺は構わずにアリサの母が入院している病院へ車を走らせた。

続く