[輪廻]
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約三時間後の新宿署。
 取り調べは続いている。徹夜になりそうだが、私はH刑事を待った。
 帰る気も、寝る気もしない。他殺体を見たことはあっても、あれほど無惨なものは
はじめてだった。
 外が明るくなったころ、彼が出てきた。
「ホトケは、マントルの女だったよ・・・」
「遺伝だろうな」
「いったい・・・」
「ホシが誰かを殺そうと街を徘徊しているときに、たまたま公衆電話のピンクチラシを見て、
マントルに行ったんだ。そこで、ホトケの住んでいたマンション名と電話番号を教えられた」
「じゃあ、殺された女は客だと思ってドアを開けて・・・」
「そう、運が悪かった・・いきなりハンマーでガツン!だもんな。殺しの動機は、
妹の精神薄弱を治すためらしい。強いショックを与えれば、治ると信じていたようだ。
目撃者が見た髪の長い女は、ヤツの妹だよ。」
「なんてことだ・・・」
「もっと驚いたのは、母親に『今から人を殺して妹に見せる。そうすれば病気が治る』
と言ってたことだよ」
「母親は止めたのか?」
「いいや」
「ということは、彼女も同じ精神病・・・」
 考えられない顛末に、私は絶句した。

 しかも翌日、H刑事からまたも悲痛な知らせを聞いた。唯一まともだった父親が、
自宅で首を吊って自殺したというのだ。
 私は、この呪われた家族には何かの因果があるのではないかと思った。
 そこで調査を開始した。

系譜の調査により、わかったのは、間田家は代々一人しか子どもが生まれていないこと。
つまり、直系が続々と続いている家系で、子孫はみな、ある年齢に達すると精神に
異常をきたし凶暴になって人を傷つけ、その後、病院に収容されて生涯を終えている。
 だが不思議なことに、身柄を拘束されるまえに、かならず子どもをつくっている。

まるで、狂った血を途絶えさせまいとするかのように・・・・。
 犯人・間田英雄の場合はどうだろう。
 今のところ、親しかった女性や妻子がいるという情報ははいっていない。
彼の近くにいた女性といえば、あの妹だけ。
 しかし数日後、精神薄弱の妹は、自殺した父親の連れ子で、間田家の血は受け継いで
いないという情報が飛び込んできた。
 ということは・・私は急いで妹の住む町の産婦人科を調査した。
 その結果、案の定、彼女が父親不明の子どもを妊娠していることがわかった。

いうまでもなく、その子の父親は間田英雄である。やはり間田家の血は、新しい命に
取り入り、生きていた。
 こうなると、間田家の血族をさかのぼり、呪われた血の源を探るしかない。
私は、戸籍にあった英雄の母親の青森県にある出身地を訪ねることにした。

続く