[月曜日の夜]
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それからしばらく、あのドキドキ体験は一度もなかった。
ただ気になることと言えば、何となく部屋の中が生臭い。
常に臭うというわけでもなく、不意に臭ってくることがある。
まあ、下水か何かの臭いだろう。
余り酷くなるようなら管理会社に電話してみよう。

まる一ヶ月経ち、次の日の火曜は寝不足で挑んだ打ち合わせ先のクライアントと会うことになっている。
ここの担当者の都合で、打ち合わせは毎月最終火曜日という約束になっている。
打ち合わせで使う資料を、その日のうちにまとめておかなければならなかった。

夜半には終わるはずの資料作りが、作業途中のフリーズで完了が延び延びになっていた。
気がつけば、そろそろ日付も変わろうかという時間。
前回の寝不足眼の事を考えると、こんな時間まで作業しなければならないことが焦りになり、
食事も抜きで作業に没頭していた。
しかし、この間の微妙に怖い体験を期に、夜は必ず電気を付けるようにしていた。

・・・・カタカタ・・・ガタ!!

え、、、、、、、またあの音だ!
今度は間違えない、絶対に寝室で音がしている。
手が震え始めた。仕事どころの騒ぎじゃない。
電気も付けているし空き巣なわけがない。
でも、確実に誰かいる。
恐怖でたまらず、部屋の鍵と携帯を取り、そのまま駆け足で外に出た。
大急ぎで1階まで降り、震える手でようやく近所に住む友達に電話した。
「も、もしもし、私、○○だけど!(ガクガクブルブル)
お、音がしたんだよ、寝てる部屋から音がしたんだよ」

「??どうしたの、そんなテンパッた声出して。
音って言われても、何がなんだかわかんないよ、とりあえず落ち着いてよ。」

「家に私しかいないのに、音が聞こえたんだよぅ、この間も、今日も。
聞き間違えじゃないよ、先月も同じ事があったんだよ。」

「ちょっと待ってよ、泥棒じゃないの?鍵ちゃんと閉めてるの?」

「確かめた。この間も同じ目に遭ったから、確実に閉めたよ。てか、誰も入れないはずだって。」

「・・・大丈夫?普通じゃないよ、焦りっぷりが。
ちょっと待ってなよ、今、新宿にいるからタクって○○の家まで行くからさ。
10分以内で着くから、それまでコンビニにでも避難してなよ。」

「わ、わかったー、お願い、怖いよ、早く来てー!!」

続く