[憑き護]
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ちょっと話を前に戻す。
A先生が戻ってくる前の話だ。
学校では放課後になればプールが自由解放されていたが
A先生が溺れた日のは、学校側が調査のためだとかいう理由で
解放されなかった。

しかし、俺や溝から先生を助けたクラスメートで
本当に溝はあったのか?という好奇心を抑えきれず
放課後にちょっと忍び込むことにした。
プールのフェンス自体はそんなに高いもんじゃないので
簡単に乗り越えられた。

中に入ると、プールの水は全て抜かれていた。

溝は・・・・・なかった。

話をA先生が戻ってきた日に戻す。

A先生はおかしくなっていた。
はっきりとではないが顔も違う感じになっていて
前の印象はなかった。
ソレは日に日に状態が悪くなっていった。
色々変な行動があったが一番印象に残ってるものは
給食運搬用の台をリアカーのように押しながら、
俺の教室の前で止まりBさんとCさんに目を向けて手招きしていた。
無表情でだ。
担任の先生が苦い顔をしながら教室を出て行き、
A先生をどこかに連れて行っていた。

六年生の水泳授業の時に
A先生が俺たちの授業の時のように見学にやってきたらしい。
前科もあるのでA先生は、他の先生にプールに入るのは堅く止められたらしい。
その日のA先生はおとなしく座っていたらしかったが
溺れてからおかしくなったA先生に
フザけてちょっかいをかけようと、六年の男子生徒が
「せんせー。溺れた場所ってあそこー?」とか聞きながら
A先生に近寄ったら
A先生の足にはとうもろこしを押し付けたような後がいっぱいついていたそうだ。
ちなみに、A先生はその場でニコニコしてるだけで何も言わなかったらしい。


その話を1年違いの兄弟がいるクラスの誰かが聞きつけて
うちのクラスでは瞬く間に噂になっていった。
足を小さな子供の霊に捕まれた跡だとか、
溝が異次元と繋がっててそこに行った証だとか。
話が広まりまくって担任の耳にでも入ったのか
担任が「人の陰口を叩くな」と怒っていた。

続く