[少年と祖母]
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中学2年になった時、町内のボランティアで再び幼稚園のあるその寺を
訪れることになった。墓地は整備され、古い無縁仏や墓石は撤去されて
以前の面影は残っていなかった。幼稚園も新築され、当時とは全く景色が
変わっていた。
寺の本堂が改築されるらしく、古い荷物やらゴミやらの掃除がボランティア
の仕事だった。住職が何十年もの間、寺に持ち込まれた物を整理している。
その中に遺影が何十枚もあった。俺と友人はそれを外に運び出すよう言われた。
黄ばんだ新聞紙に包まれた遺影の中に一枚だけ裸の遺影があった。
俺はその遺影を手に取って見た瞬間、全身の血が凍った。

あの時みた少年の遺影だった。そしてその少年の背後からその少年の首を
この世の物とは思えない形相で絞めている祖母の顔が写っていた。
俺は気を失い、目がさめた時は病院だった。
父も母も恐怖で顔が尋常ではなかった。


後に写真は住職が供養して焼却処分したと聞いた。
父が住職に聞いた話では、その少年は戦時中、土地の地主が養子に引き取った
子で、かなりの冷遇を受けた後、病死したらしかった。
祖母は若い頃、その地主の家で手伝いをしていたらしく、かなりその子を可愛がって
いたそうです。

その少年は多分俺を連れて行く為に現れたんだろうと住職は言っていたそうです。
祖母はそれをさせまいとして、その結果があの写真だったのだろうと言っていました。
その後、すぐ引っ越したのですが、今でも思い出します。


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