[タイでの出来事]
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バイクに乗っているときに『この先には行きたくない』と感じたことが
過去にも一度あった。それは学生時代、千葉県の「とあるダム」に、
深夜2時頃ドライブに出かけたときのことだ。

以前このオカルト板でも書いたことがあるのだが、
その時にもし進んでいたら、首吊り自殺の第一発見者になるところだった事が、
後日わかったというものであった。

今回もその時に感じたのと同様の凄まじい拒否反応が生じて、
昼過ぎの強い日差しが照り付ける猛暑にも関わらず、
背筋に冷たいものを感じたのである。

例えるならば、スレに貼り付けられたURLを何気なくクリックし、
予想外にグロ画像とわかって慌てて閉じようとする時のような、
「稲妻が体を突き抜ける感覚」に近い忌まわしい感覚なのだ。

そのまま行くべきか戻るべきか逡巡していると、
今来た道の方からバイクの音が近づいてくる。

なんとなくホッとして、バイクの姿が見えるまでその場に留まり、
相手が現れるのを待ってみた。

そのバイクが私のいる開けた場所に入ってくると、
私の方からすかさず声を掛け、挨拶を交わす。

どうやら中年くらいの男性が運転し、
その後ろに妻と思われる女性が乗っているようだ。

私が声を掛けると、ちょっと驚いたような顔をしてから、
夫婦そろって満面に笑みを浮かべて挨拶を返してくる。

長袖に長ズボン、ヘルメットの代わりに麦わら帽子をかぶり、
バイクには鎌のようなものや、籠のようなものも取り付けてある。
後で知ったのだが、どうやら山に自生している山菜やキノコ、
木の実などを取りに時々入っていく人がいるらしい。
彼らもそうした人達なのだろう。

そのような場所に、よそ者の私がバイクでズカズカ入っていくのも
気が引けるということもあり、バイクをその場で反転させると、
元来た道を早々に引き返すことにした。

翌日の早朝、家の庭先に集まった複数の人の大声で目が覚めた。
早口でガナリ立てるような話し方から察するに、どうやら何か揉め事らしい。
迷惑に感じながらノロノロと部屋を出て、妻に何があったのかを尋ねると、
昨日隣町で不幸な事件が起こったというのだ。

その話を聞いているうちに、私の目ははっきりと覚めて行き、
代わりに恐怖で身がすくんで行くのを感じた。

昨日私が進むのをためらった、ちょっとした広場で出会ったあの夫婦。
あの先の森の中へ山菜取りに入って行き、
それぞれが思い思いに山菜をとり始めたのだが、
妻が奇妙な声で小さく叫んだのを聞きつけた旦那が不審に思い、
手を止めて妻を呼んでみる。

しかし、すぐそばにいるはずの妻からは返事がなく、
じっと耳を澄ませても何も聞こえない。

そこで茂みを掻き分けて妻を捜し始めた矢先に、
目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だったのだ。

続く