[タイでの出来事]
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なんと大人の太ももよりも太く、7〜8メートルもの長さがある大蛇が、
妻の体にグルグルに巻きついて、ギュウギュウ締め上げているところだったのだ。

妻の表情は恐怖と、締め上げられ、全身を骨折させられながら、
徐々に窒息させられていく苦痛のため、この世のものとも思えない形相に
なっており、助けたいと思っても一人ではどうすることも出来ないような状態に
なっていたらしい。

そこで慌てて山を降り、村の男数人を集めて再び戻ったものの、
すでに妻は頭から飲み込まれ、
ヘビの口からは膝先の部分が出ているだけの状態にまでなっていた。

その口からはみ出た足が、時々有り得ないような不気味な痙攣を起こしながら、
完全に飲み込まれるのを辛うじて阻止していたらしい。

既に頭から飲み込まれた段階で全身が骨折し、窒息させられていたため、
意識は無かったものと思われる。

だが、飲み込まれてなお、最後の最後まで生体反応を見せていた
その女性の様子が、助けに来たものの目と心に深く焼きついたらしい。
もしあの時、あの夫婦が訪れていなければ、
大蛇に飲み込まれていたのは私だったのかもしれない…。
タイをはじめとする東南アジアには、
広く「アミメニシキヘビ」という大蛇が生息しており、
時々人を締め上げ、稀ではあるが飲み込んでしまうらしいのだ。

その後、そのヘビは男たちの手で村まで運ばれ、解体されたらしい。
飲み込まれた女性はすぐさま助けられたものの、
残念ながら助け出されたときには既に手の施しようが無い状態で、
その後、息を引き取ったとのことだった。

東南アジアでは決して一人で山道に入ってはいけないのだ…。


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