[赤ちゃんを返せ]前ページ

さすがに私もヤバイものなのではないか、という気持ちが強くなり、
みんなに帰らないかということを合図しました。
ただ、そんなことを聞くような連中ではありません。
とりあえず、その女性が通り過ぎるまで待機しようという
Bの合図もあって、とりあえず女性の様子を見守っていました。

すると突然、女性が大声で叫び、騒ぎ始めました。

「私の赤ちゃんを返せ!!私の赤ちゃんを返せ!!」


髪を振り乱すように騒いでいます。
私たちはさすがに怖くなり慌てましたが、
今ここで声を出して逃げ出すわけにはいきません。
少し気の触れた人かもしれませんし、
ともかく更に息を潜めてその様子を見守っていました。
何十秒、何分経ったかわかりませんが、
女性は海に向かって叫び狂っています。
そしてそれは突然のことでした。

女性は私たちの方に体の向きを変え、
突然走って私たちに向かってきたのです。

「お前らか!!お前らか!!」

恐らくそう言っていたと思います。
私たちは大慌てで逃げ出しました。
ところがCだけがその女性に向かって走り出したのです。
「おい、何やってるんだ!逃げろ!!」
そう言う私たちに見向きもせず、
Cは「うわーっ!」と叫び声を上げながら走っています。

正直私たちにCをかまっている余裕などありませんでした。
とにかく大急ぎで私たちは自分たちの部屋に戻りました。
各々が自らの身体を抱きかかえるようにし、
息を整え、震えを沈めようとしていました。

続く