[霊感の仕組み]
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「霊能力者の仕組みもそれと同じなんだよ。昔から霊と協力しあったり、霊を退治したりしているうちに霊感が発達した家系に生まれたっていうことだな。そういう家系じゃないのに高い霊能力を持つやつは、先祖に霊と隣り合わせの生活をおくっていた奴がいたんだろう」
師匠は言葉を終えると、僕の顔を見てニタリと笑った。
「時に少年。お前は、メガネをかけてるときとそうじゃないときでは、どっちの方がよく見える?」
何て馬鹿げた質問をするのだろうか、と僕は声をあらげた。
「そんなの、メガネをつけてるときに決まってるじゃないですか!」
すると、師匠はますます面白そうにニタニタ笑う。
「じゃあ、俺といるときとそうじゃないときでは、どっちがよく“霊”を見る?」
「!」
そのとき僕は、頭にビリビリしたものが走るのを感じた。師匠はまた話し始める。
「そういうことだ。目が見えづらいときはメガネという別のレンズの力で視力をパワーアップさせる。霊感も、他の強い霊力を借りているうちはパワーアップさせることができる。」
師匠の言葉に、僕は素直に感動した。それは、師匠とつるむようになってから不思議な体験をすることが多くなっているということに気づいていたからかもしれない。
「普段霊を見ない人が霊を見るのは、メガネの役割になる霊能力者が近くにいるときか、霊の力が大きいときだ。目が悪い奴でも、大きな字なら見えるだろ」
「確かにそうですね!」
「霊感の仕組みなんて、その程度だ。視力や聴力…人間の五感とかわりない」
師匠は撫でていた顎を今度はかきながら、説明を続ける。
僕は先ほどからずっと気になっていることを訊いてみた。
「ということは、人間は生まれ持った霊能力以上の力を得ることはできないんですか?」
すると師匠は、やる気のない顔を僕に向けた。
「…視力を失った盲目者が再び視力を得るにはどうしたらいい?」
「!?」
「…腎臓とか肝臓が、病に侵されている奴は、どうやって寿命を伸ばせばいい?」
「………」
師匠の突然な質問に、僕の頭にはひとつのことしか浮かばなかった。
「…移植…?」
自信はなかった。だけど師匠は満足そうな笑みを浮かべる。
「ご名答。霊力は移植できる」
まさかとは思っていたが、本当にまさかな返事に驚く僕。
「そんなことできるわけ……でも、一体誰が、どうやって!?」
あからさまにパニック状態の僕に、師匠は言葉を補足した。
「この世には、どんなものにも専門の医者がいる。外科医、内科医、眼科医…。人間だけじゃなく、動物や機械にだって専門の医者が多くいるんだ。霊能力を扱う医者がいたっておかしくないだろ。まぁ、普通の医者ほど数はいないが」
補足のせいで、僕はますます頭が混乱した。この人の言っていることは、どこまでが本当なのか。(全部本当だったらどうしよう(°д°;;))
「つまり、専門の移植霊能力者を見つけて、強力な霊感を持つドナーを見つければ、誰でも強い霊能力者になれるっつうことだ」
「ドナー?…ってやっぱり、自分の体に合うとか合わないとかってあるんですか?」
「あぁ、ある。霊感移植は、同じ霊能力の性質を持ったドナーからしか移植しちゃいけねえんだ」
淡々と言う師匠。僕はゴクリと唾を飲んだ。
「何故です?」
すると師匠は、スッと指を二本立てた。
「理由は2つある。1つは…あまり自分自身に不都合はないことだが、性格が変わってしまうことだ。魂の質が変わるのと同じことだから仕方ないがな。乱暴になったり、臆病になったりと様々らしい。」
「性格が変わって困るのは周りですね」
僕は呟く。師匠はコクコクと頷いてから、二本の指を一本に変えた。