[部室]
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俺は呼吸を殺し、微動だにせず時間が過ぎるのをまった
女子バスケ部のドアを開け、鍵を閉める音が聞こえる
どうやら帰るようだ ホッとした
次の瞬間、俺のいる男子バスケ部に足音が近づいてきた
ここに入ってくる気か・・・?
俺は床に敷いていたタオルを顔に巻いた

ガチャガチャ ギイイ
Kがドアをあけた瞬間
俺はKを突き飛ばし、一目散に逃げた
Kは何がおきたのかわからなかったのか、それともその気がなかったのか ともかく、追いかけてはこなかった

次の日、学校は休みだったが、部活はあった
俺は部活には参加したくなかったが、
ここで休んだら疑われるだろうし、
なによりKの様子が気になったので 部活に参加した

シュート練習をしている俺にKが近づいてきて、小声で尋ねてきた
「昨日の夜、部室にいた?」
俺はギクリとしたが、表情には出さずに「いや、なんで?」と聞き返した
「なんとなく」
そういったっきりKは俺の横から去った
(まさか、ばれたのか?)と思ったが、
Kは他の部員にも同じことを尋ねていた ばれているわけじゃないらしい

その日以降、Kは俺を含める男子バスケ部員にことある毎に
「○日の夜、部室にいた?」と聞いてきた
いい加減、うっとおしいしなと思いはじめてきた

何週間か経過して、月曜日
女子バスケ部のキャプテンのUが俺たちにいった
「あんたたち、変なことしてないよね?」
俺は「はあ?」といった(覗き穴のことがばれてるのか?)とギクリとした
「ここ最近、毎週うちらの部室が荒らされてるんだよね 今日確認したらまた荒らされてた」とUは言った
(毎週?あの日だけじゃなく毎週なのか Kは誰かにばれてたってわかってるだろうに、まだやってんのか)
その場はしらんぷりしたが、いい加減にKが気持ち悪くなってきた
一回だけならともかく、バレたのに、まだやってるのか 得体の知れない化け物に思えてきた
密告分を書こうと思ったけど、ばれると嫌なので放置しておいた

ある日を境に、Kが学校に来なくなった その日は生活指導の体育の先生が腕に包帯を巻いていた

噂によると、定期的に女子バスケ部の部室が荒らされるので、
体育の先生や他の先生方複数で見張りをしていたらしい
そしてKが女子バスケ部に入ろうとするところを押さえた
Kは手に包丁を持っており、それで先生を刺した けれど、捕まった・・・
Kが実際、どうなったのかは知らない
先生にそれとなく尋ねても、何もいわなかった

数日後、うちの母親がいった
「K君のところ、引っ越したんだってね」
俺はどこに?と尋ねた
母親は知らないと答えた
翌日、登校前に遠回りして、Kの家の前を通りかかった
カーテンはそのままだったが、庭にいた犬がいなくなっていた
どうやら引っ越したという噂は本当らしかった

あれ以来、Kとは会っていない

おわり


次の話

Part203
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