[件の小道]

最近驚いたのだが俺の実家近くがネット上でオカルトスポットとして有名だった。
確かにその場所は幼い頃から色々あったので少々驚いた。
俺だけでは無く、親戚、友人、当時の彼女、後輩等色々な人間が同じような体験をしてる。

一貫しているのは「お坊さんっぽいモノ」もしくは「落ち武者っぽいモノ」と言う事。

エピソードを一つ。
当時高校生だった俺は欲しい単車があって毎日バイトに明け暮れていた。
自宅から徒歩10分、原チャリなら数分の距離。
ある日バイトを上がる時、突如大雨が振り出した。
その日は原チャリで通勤して居たためバイト先の先輩が車で自宅まで送ってくれる
という事で助かった。

その人は今で言う秋葉系なのだが、明るく人当たりも良く俺は好きだったが二人きりで
飯喰いにいったりという特別な交流は無く、勿論我が家も知らないし、車に乗せてもらうのも
初めてだった。

そんな豪雨の中、助手席に乗せてもらい自宅へ送ってもらう事に。
自宅に帰るにはネット上で「オカルトスポット」とされる道を通らなければならない。
しかし幼い頃から慣れ親しんだ俺は全く意に介していない。

車は件の道へ。
対向車とのすれ違いも出来ない小道。
豪雨のせいでいつもにも増して見通しが悪い。

その時車内で「音」が聞こえた。
シャリンシャリンという鮮明な音。修行僧?みたいな人が持ってる、金属の輪っかが
頭に付いている杖のような「音」。

俺は内心(ああ、そういやココは色々あるもんなあ)位に思っていた。
その音は運転席の先輩も聞こえたようで
「今なんか音したよね?」と尋ねてきたが、「なんですかねえ」位に返答を濁した。

無事に件の道を抜けて自宅へ到着。
先輩が尋ねてくる。
「俺の家は●●駅の近くなんだが、どう帰るのが近いかな?」
「今来た小道を抜けて戻る形が一番早いと思います」
俺はそう答えて、御礼をのべて帰宅した。

しかし、数日後バイト先で温厚な先輩が同期の社員と取っ組み合いの喧嘩をしていたのだ。

温厚な先輩が血相を変えて仲の良い同期社員の胸ぐらを掴み何やら怒鳴っていた。
慌てて仲裁に入り、事の顛末を尋ねた。

先輩曰く「コイツ俺の話を信じないどころか馬鹿にしやがった!」と、とにかく凄い
剣幕だった。
何やら嫌な予感がしたのだがひとまず落ち着かせて話を聞いてみた。

問題はやはり「あの道」だった。

俺を送った帰り、先輩は俺の進言通り「あの道」を逆走するルートで自宅に
向かったらしい。
その頃はさらに雨も酷くなり数メートル先が見えない位だったと言う。
危険なのでヘッドライトをハイビームにし、慎重に走行していたそう

いつも明るい先輩は顔色が悪く、トーンも低く、ゆっくりだが続きを話してくれた。

慎重に車を走らせていると10メートル位先に何やら「居た」と言う。
頼りになるのは車のヘッドライトのみ。
何だ??と思いながらも車を進め徐々に対象物に距離が近づいてくる。
あと数メートルという所で固唾を呑んだと言う。
先輩は興奮気味にこう表現していた。

「頭つるんつるんでさ!下半身が無い、もしくは下半身がアスファルトに埋まっている
のどちらかしか考えられない!坊さん??だったんだよ!袈裟みたいな格好でさ!
俺に手を振っているのか、もがいてるのかは不明なんだがオカシイだろ??」

話を聞く限りどう考えてもおかしい・・・

「あんな細い道だからUターンも出来ないし、慌ててアクセルを踏んだんだよ。
そしたらさ、ずーーーーーっと俺に目を合わせながら通り過ぎる時にも上半身が
グルンっと回転して俺を追ってるんだよ!真っ黒な目ん玉してて何なんだよあの道!?」

その時「あの音」の事を思い出しゾッとした。

さらにバイト先に停めてある先輩の車の左ミラーは割れていた。


この話にはさらに後日談がありますが、長くなりそうなのでひとまず。

これはGoogleストリートビューで実家近辺を観てみようとネットで色々遊んでいた時に
「オカルトスポット」だという噂が流れていて思い出して書き込みました。

そんな事がありながら1年も過ぎれば俺も先輩も「件の小道」については記憶が
薄れていました。
と、言うか完全に忘れていた。

丁度そんな時期、バイト先の店長の誕生日と言う事でうなぎ料理店でバースディを
行った。当時数千円のうな重は非常に美味しくて嬉しかったのを覚えてる。
まだ未成年だった俺だったが、お世辞にも育ちが良いとは言えず、身体には既に
年不相応な「落書き」があったり・・で、すでにアルコールは「安全」と認識していた。
その当時は現在のように飲酒運転に対する司法及び個人の認識も甘く、いわば暗黙の了解だった
時代です。
せっせとバイトで貯めたお金で合法的に単車も手に入れた時のお話です。

続く