[3体のモノ]


ガキの頃に親父の田舎で起こった話なぞひとつ書き込ませてもらいます。
長文になるのでご勘弁。

自分の親父の実家はよく言えば自然に囲まれた農村で、悪く言えばド田舎。

マムシは出るは、見たこと無いが熊が出るはで、
夏休みに遊びに行くときは色んな意味で自然ってものを教えてもらった。

今から話すのは自分が小学校3年の夏休みの出来事。

自分はお盆の時期に祖父母の家へ家族で1週間程過ごしに行った。

自分は年上の従兄弟(年齢順にA、Bにします)2人と朝から日が暮れるまで遊びまわり、
帰る日が近づく頃には真っ黒に日焼けするぐらい遊びまくった。

そして家に帰る前日になると、死ぬ程遊びまくったはずなのにまだまだ遊び足りない自分は、
AとBに帰る前にもっと楽しいところは無いかと話しかけた。

そしてAの提案で第2の秘密基地と言うところに行くことになった。

第2の秘密基地と言う所は山に少し入ったところにある宗教団体が建てたらしい建物で、
敷地を囲む金網があるが、入口の扉の鎖が緩んでいて、子供なら入れる状態だった。

人気が無く荒れ放題で、ボロボロの金網に囲まれた敷地内は雑草に覆われており、
駐車場や通路はアスファルト舗装されているが殆ど落ち葉で路面は見えない。

平屋コンクリ造りの建物は所々白い塗装が剥げ落ちていて、ドアや窓は雨戸で締め切られていて、多分一つ一つに南京錠がかかっていた。

A達が出入りしている建物入口は倒木で戸板が割れている裏口で、
A達の後について入ってみると中は直ぐに小さな集会場のような部屋になっていて、山形に取り付けられた天窓があり、そこから入る明かりで明るかった。

部屋には横長の祭壇とリアルチ○ポの形をしたご神体らしきものがあり、自分はアホな子供らしくそれを見てゲラゲラ笑っていた。

後はご神体を振り回す・投げる・石投げの的にする等罰当たりな事をしたり、
建物内を探検したりと色々遊んだが、いい加減日も傾いてきて暗くなってきたので帰ろうって事になった。

入ったときと一緒でAを先頭に建物から出たとき、Aが突然「下向け!顔をぜったい上げるな!」と怒鳴った。

え?と思ったが、言われるままAの足元を見ながら建物の敷地を抜けようとすると、途中で誰かにすれ違った。

そいつを一言で表現すると「青」。

自分はそいつの足しか見てないが、老人の裸足で色が不自然な青の濃淡だけで見えている。

昔は五百円札みたいだと思ったが、今なら千円札の野口英世があの色合いのママ立っている感じだった。

自分はそんな奴が近くに立っていると思ったら怖ろしくなってきて、出来るだけAやBにくっついて歩いた。

Aは「○○○さん助けて下さい」みたいな事を呪文のように繰り返し呟いている。

自分とBは半べそで兄貴にくっついている感じで、もうひたすら此所から出たいだけだった。

3人で早歩きになりながら、敷地の出入り口に向かうアスファルトの通路にでた。

自分は出口が近いと思ったら走り出したくなり、少し顔を上げたら後ろ姿のAに、
「あと二人いる!頭下げろ!」と怒鳴られた。

見ないで自分が顔を上げた事に気付いたAに驚いたが、
Aの声の感じが何時もと全く違うのと言った内容にビビって直ぐ下を向いた。



暫く歩くと金網が揺すられる音がして、Aが出入り口の隙間から出ようとしているようだった。

見えるAの足が尋常じゃないぐらい震えている。

Aが外に出た後で、まだ敷地内で下を向いているBと自分に差し出す手も震えていたが、
その理由は直ぐに判った。

確かに2人目はいた。


続く