[3体のモノ]
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自分は足をチラッと見ただけだったが、さっきの老人の足とは違う若い女性の足で、
くるぶし辺りが縦に数cm裂けている感じに見えたが、皮膚も裂けて見えている肉も青かった。

Aはまださっきの祈りみたいなのを続けている。
祈る声が時々うわずったりして精神的にきつそうだったが、年下の二人を連れている事もあって頑張っていたと思う。

自分とBはAにすがるような気持ちで、並んでAの後ろを並んでAの手を掴んで進むしかなかった。

山道を下りる時もAは祈りを繰り返しながら、時々自分たちに「あと一人いるはずだから下向いてろ」みたいなことを言っていた。

もうすぐ山道を抜ける所まで来たとき、
自分は安心感(と言うより安心したかったかも)から頭を少し上げて前を見たが、
道の先に誰も立っていないことに本気で安心したが、やはり甘かった。

最後の一人は、進む先の路上から4m位の高さに時々ブレながら浮かんでいて、
今じゃ見ないような結った髪型の着物を着た青い女が半笑いでこちらを凝視していました。

自分は怖さの余りAにしがみついき、
Aは自分がそれを見たのが直ぐに判ったようで、自分を抱えるように歩いてくれた。

そして日が落ちた頃にやっと祖父の家についた。

出迎えた祖父は怪我でもしたのかと心配して聞いてきたが、
Aがそれを見た事とちゃんとお祈りしながら帰ってきた事を話すと家中が大騒ぎになったのを覚えている。

祖父と親父は慌てて供え物をもって何処かにでかけ、後から来た伯父も親父達の後を追って出かけていった。

祖母や母、伯母は祖父の家に残ったが、伯母は大泣きでAに付きっきりだった。

自分とBは起こったことが良く判らなかった。

しかし、Aが夜になると熱を出し始め、
Aが死んじゃうんじゃないかと心配になって横で泣いていたが、祖母に他の部屋に移されて寝かされた。

次の朝、祖父母の家から全員で少し山を登った所にある墓に手を合わせに行くことになった。
熱の下がってきたAも伯父に背負われていた。

誰の墓だか良く判らなかったが、墓は古く少し大きめの石を土台に据えた感じのものだったと覚えている。
自分の家系の氏神か何かかもしれないが、社とか無かったから只の墓かもしれない。

後は帰っただけなんでこの話は終わりです。

後日談としては、祖父の葬式の時に久しぶりにAにあって話をしましたが、その時の話をすると
A「オレが彼奴らにヤられたらイカレてお前ら殺してたから、気持ちで負けん様に必死だったよ。
お前は分家だから取り憑かれないけど、Bが見てたらやばかったかもな。」
みたいなことを言っていました。
うちの家系って祟られてんのか?と思って少し怖かったかな。


Part198
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