[逆吸血鬼と存在しない町]
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ならこれは何だ?
後ろを振り返る。
相変わらず人の気配のない住宅地
これは町に偽装したUFOだ!
そう結論した。
そして俺のおかれている立場に恐怖した。
これじゃあ、わなに飛び込んだも同然ではないか?
目の前にはよく親しんだ学校がある。
そこには遠目ながら遊んでいる子供たちがいた。
宇宙人に気づかれる前に急いで逃げないと・・・・・・。
そうして俺は走った。
必死に目の前の道を走った。

 そして、目の前の車が走っている普通の道路を渡り、学校の校舎の中に飛び込んだところで、ようやく一息ついた。
グラウンドでは、野球部の少年たちが練習をしていた。
それをみて、安心する。
そして横目でそっと先ほどまでいた住宅地の様子を伺う。
それは山の上に覆いかぶさるように存在した。
だが自分の記憶をいくら探っても、あの山に住宅地が存在した記憶がない。
何より、ほかの人がまるでその住宅地を存在してないかのように扱っているのが不気味だった。
事実、どの車も住宅地に入ろうとしない。
そして最も異常なのは、信号。
それは例の住宅地に続く交差点の信号。
信号は赤になっているのに、車が止まらないという事実。
きっと運転手には信号どころか交差点の存在すら分からないに違いない。
あれには関らない方がいい。
それが俺の出した結論だった。
だから、学校を出て普通の通学路を通って帰ろうと思った。
そして今日はゼルダをやって時間をつぶそう。
「おい!」

突然声をかけられた俺は、脱兎のごとく走り出した。
「あ、まてって!」
そういわれて待つやつなどいない。
(宇宙人に見つかった)
そう思ったからだ。
チラッと見た感じだと、若い普通の男性みたいだったがそのときは冷静ではなかった。
だが、子供が大人に勝てるはずもなく、程なくして俺はつかまった。
それでも、鳴いて喚いて噛み付く俺を男は必死になだめてくれたおかげでだいぶ落ち着いた。
「本当に、本当に宇宙人じゃないの?」
「違うから・・・・・・」
半分疲れたかのように男はいった。
見た感じ普通の男、どこにでもいるような大学生か高校生だった。
それでも宇宙人ではないかと疑った俺はいろいろ質問をした。
「おっさんの血の色は何色?」「おっさんじゃねえ・・・・・赤」
「なら血液型は?」「A型」
「星座は?」「水がめ座」
「なら今日の運勢は?」「最下位だったな」
とかetc。
「どこをどう見たら、宇宙人に見えるの?俺が?」
半分あきれている。
確かに眼は真っ黒ではないが、でもコンタクトをしている可能性がある。
だから確かめるためにチョキで男の目をぶっ指した。
「〜〜〜〜〜〜」
男はそこら辺を転げまわった。

 「ごめんなさい」
数分後、立ち上がった男がしたことはまず目をよく洗うことであった。
目は真っ赤になっているから、コンタクトではなかった。
「コンタクトをしているわけではないとわかったな?」
男はため息をついた。完全にあきれているようだが怒ってはいなかった。
「俺もう家に帰るから。ありがとうございました」

続く