[稲垣]
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いつの間にか、ドアの前から気配は消えたていた…
「稲垣?」
名前を呼んで見たが、やはり返事は返ってこない
稲垣は行ったのか?
死の間際に、俺に会いに来たのか?
そう考えるより他にはなかった、幽霊なんてまったく信じていなかった俺にはショックだった
こんな馬鹿なことが実際に起こるなんて
とりあえず、稲垣は俺に会いたかったんだ…そう自分に言い聞かせることで
俺は、冷静を保つことが出来た。
そういえば、井上からの電話がほったらかしだ。
一度深く深呼吸をして、俺は携帯を手に取った

「ゴメン、井上、ちょっと、トラブッタわ」
「もしもし?井上?」
返事がない…電話は繋がっているようだが、返事がない…
「おい、井上、聞こえてる?」


「あ〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜
あああああぐぐぁ〜〜〜…聞こえ・・・てる」

何だよこれ?
俺は慌てて電話を投げ捨てた
その時、俺の背中に何かが触れた…
俺には、もはや振り返る勇気はなかった

その後のことは、覚えていない
気付いた時、俺は病院のベッドの上だった



しかし…あの日から



稲垣は…毎日俺の病室にやってくる
 
もうどうでもいい。

何もかも…



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Part194
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