[エレベーターの女]
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すると
エレベーターの奥に女性がすでに乗りこんでいた。
私は乗り込む際、思わず反射的に「こんばんわ」と挨拶を口にした。
彼女はシカト。だまってうつむいたままだ。
私はメラメラとまた怒りのボルテージが上がってきた。
(自分法であいさつを無視されるのが妙に気にくわない。
プライドを過剰に傷つけられるような気がして、しらふの時でもやけに腹が立つのだ)
あいさつもしない。エレベーターも地下で止めっぱなし
「クソ!いまいましい。何階の娘だろう」
そう思った時に、目的階のボタンが自分の行く7しか点灯していないことに気づいた。
「こいつ、同じ階か」
いやな面もちのまま、あっさり7階に到着した。
後乗り手前に乗っていたため、私が先に下りる。
通常ならここで「おやすみなさい」など住人どうし言うものだが
私は先ほどの件があったので、無言でそのまま下りた。
後ろで扉がシュっと閉まる音がした。
結局、その娘は7階では下りなかったのだ。

「変だな」と思いながらそのまま気にもとめず帰宅したのだった。

それから数日後、
妻が会社のお得意先の飲み会で深夜遅く帰宅した時のことだ。
まず携帯で妻から呼び出しを受けた。
タクシーに乗ってマンションの前まで帰ってきたのだが、手持ちが1000円ちょっとしかないのでお金が足りない。お金を1階まで、早く持ってきてほしい。とのこと・・・
・・・仕方ない。
パジャマにつっかけで財布だけもって、妻とタクシーの待つ1階に向かう。
エレベーターは地下に止まっている。
下向きのボタンを押して上がってくるのを待つ。
みんなの想像とおり、エレベーターは本当に来ない。
いやな予感と共に、先日乗り合わせた奇妙な女を一瞬思い出して
それから階段で下りていくことにした。
途中5階ぐらいに下りて、エレベーターが上がってこないか確認するが
まだ地下に釘づけ状態。
あきらめてどんどん下っていった。
続く