[エレベーターの女]
酒を飲んで、深夜に帰宅した
道が混んでいなければ、最寄りの駅から車で10分くらいの場所にあるマンションに私は住んでいる。
普段は駅までの道は行きも帰りもバスを利用しているのだが、
その時は午前1時を回って2時近く、深夜バスもない時間帯だった。
従ってタクシーで、その日は帰宅した。
マンションはオートロック式で、ナンバー入力により開錠しエレベーターホールまで数歩。
地上12階建て地下1階(駐車場)の私は7階11号室の住人である。
エレベーターはB1にとまっていたため、1階に止まるまで数10秒待たされる。
深夜で当然あたりは静まりかえり、人の気配などない。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・遅い。
エレベーターが来ない。ずっと地下に止まったままで、なかなか上がってこない。
地下で人待ちでもしてるのだろうか。生理的にイライラしてくる。
かといって7階まで階段であがる気には到底なれない
せいぜいエレベーターの所在をあらわす明かりを見上げながらイライラするだけだ。
正確に計ったわけではないが5分近く経過しただろうか。
その時の私は、下にいる住人に文句の一つや二つ言う気分で、地下まで下りて行くことにしたのだった。
カツンカツンカツン・・・
異様に自分の足音が大きく聞こえる。
折り返し折り返し下ってきて、何台もの車が並ぶひらけたところに出てきた。
すぐエレベーター室の前に行く

人がいない。
あれだけ待たされたにも関わらず、
でもまあよし。としよう。酔いのせいか感情の波も単純なようで
気炎の出鼻をくじかれたような、無用のトラブルが避けられたような
ホッとした気持ちでエレベーターに乗り込んだ。
扉が開く。

すると
続く