[エレベーターの女]
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ようやく1階に着き、タクシーの運転手に礼をいいお金を払った。
(詳しくは忘れたが、1200円超?のところチップ代わりに2000円渡してお釣りは受け取らなかった)
妻とエレベーターに乗ろうとする。
またもや地下1階にとまったままだ。
今度もあの女の仕業だとは思わないけど、いい加減こっちは辟易している。
「せっかちなのよ」と妻は笑うのだが
性分か、無駄な待ち時間は我慢ならない
先日の話しをザッと妻に話し、二人で駐車場まで下りていったのだ。
今度もまた地下に人影も気配もなし
妻は面白がっている。
「きっと幽霊なんじゃないの?」
「新築なのに、そんなことはありえなくないか?」
たわいもない会話をしながらエレベーターに乗り込む。
開く扉の向こうには何もない。ベージュの塗装のきれいなパネルのなんの変わりもない
エレベーターの内装があり、誰も乗ってなどいなかった。
拍子抜けしてしまった。

それからまた数ヶ月が経過した。

例の深夜のエレベーターが地下にとまりっぱなしの話し
同様の体験をした住人が何人もあらわれ、じょじょに問題になり始めた
理事はいたずらと見て、回覧板とエレベータホールで注意を促し始めた。
その頃くらいから階段を利用する住人が急に増えていったのだ。
今までは階段など、低い階に住む人か、せいぜい子供くらいしか利用はなかったのだが
高層階に住む人(私も含)も利用。階段でよく人とすれ違うようになった。
たぶん住人の90%はエレベーターを利用していない。

それもそのはず
あれから決定的な事件が起こったからだ。

続く