[フランケンじじい]
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「俺が入ってくるよ!!」
一番のお調子者のI君がそういいました。
当のフランケンじじいが確実に不在で、しかもしばらく帰って来る様子もないことに気を良くしての事でしょう、ちょっとしたヒーローになるチャンスです。

古びた板戸を引き開けると中は薄暗く、当然ながら人の気配はありません。
ズンズン踏み込んでいくI君の背中を見てた私たちはちょっとしたいたずら心が湧きました。
いきなり板戸を両側からピシャンと締め切ったのです
フランケンじじいの小屋に閉じ込めてからかってやろうというわけです。

「うぎゅわー!!!!#&%’」
いきなり閉じ込められたI君はすさまじい叫び声をあげました。

「来たっ来たっ! 助けて!助けて!」

「うっくっく、あいつ馬鹿だな」
「何を怖がってんだか…」
叫び声をあげるI君の様子にみんなげらげら笑いだしました。

「いるっ!いるっ!」「早く!早く出して!!」「いるんだよっ!こっち来るっ!」
誰も居ないはずの小屋なのに、異様なほどのの騒ぎようです。
不審に思った私たちはようやく板戸を押さえてる手を離しました。

ガラーー!!
「ウワああァアン!!!」

勢いよく開かれた戸口からI君が飛び出してきました。そしてそのまま一目散に逃げていきます。
わけがわからないまま、つられて私たちもワーワー言いながら後に続きました。
近くの空き地まで逃げてようやくI君を捕まえると、涙と鼻水でぐしゃぐしゃでした。
おまけにガクガク震えてました。
なんとか話を聞くと、板戸の閉まる音がした瞬間、奥のほうから「フランケンじじい」がのっそりとでてきたというのです。
そしてボソボソ何かつぶやくように話しながら(思い出せないがとても嫌な話だったと後に語った)、妙にゆっくりとした動作で近づいてきて、
こちらに向かって手を上げかけたところで戸が開いたのだそうです。

続く