[炎と氷]
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修行の第一段階として、俺達は呼吸法をレクチャーされ徹底的に反復させられた。
詳細は省くが、第1は「ゆったりとした呼吸法」。
ひたすらゆっくりと、「頭の天辺から背骨を通して息を吸い、尾?に貯めて息を止め、背骨を通して頭の天辺から息を吐く」というもの。
吸気・停止・呼気をそれぞれ同じ時間掛けて行う。
通常は各1分間で一息3分間、10息が出来るようになるまでこれだけを続ける。
熟練者、例えばキムさんはこれを各2分間で5息行えるらしい。
尾?骨に精神集中し、決められたイメージを描き続ける事が必要だが、呼吸の苦しみでイメージを保つ事は極めて困難である。
殆どの者は1分間に達する前に挫折するらしい。
時間のない俺達は各30秒で20息出来るようにと言われた。
俺は、肺活量が最盛期6000cc近くあり、安静にしてだったら、息を一杯に吸って3分間は息を止める事ができた。
しかし、精神集中とイメージをしながらの呼吸法は想像以上に苦しく、各30秒・20息を行った後は激しい頭痛と吐き気に襲われた。

第2に「激しい呼吸法」
眉間に精神集中をしながら、両鼻孔で25回の呼吸を出来るだけ早く深く繰り返し、完全に息を吐ききったら喉・腹・肛門を締める「三段締め」を行う。
限界まで息を止めたら、両鼻孔で息を吸い、息を圧縮して限界まで保持する。
限界に達したら両鼻孔から勢い良く息を吐き、再び25回の素早い呼吸からはじめる。
これを30回行う。
これは過呼吸のせいか、頭の中や目の前がチカチカしてきてキツイ。

そして第3の「逃れの呼吸法」
呼吸や心拍が限界に達してヤバイ時に行う。
鼻から腹式呼吸で丹田に息を下ろし、下腹で圧縮する。
圧縮を掛けながら下腹からゆっくり息を抜く・・・これは、空手などでスタミナが切れ、息が上がった時に行う呼吸法に非常に良く似ている。
マサさんの修行法は、武道や武術の応用が非常に多いのが特徴なのだ。
ガキの頃から運動馬鹿だった俺はPよりもかなり早く条件をクリアできた。
俺は先に第2段階に進んだ。
俺は第4の呼吸法をレクチャーされた。「丹田と尾?を連結させる呼吸法」
下腹を引き締め両鼻孔から息を吐き切る。
右手人差し指を眉間に当て親指で右の鼻孔を閉じ、左の鼻孔から首から尾?骨にかけての「背骨」に息が満ちる事をイメージして息を吸う。
限界まで腹に力を込めて保息し、限界になったら、中指と薬指で左鼻孔を塞ぎ、右鼻孔から吐き出す。
今度は、右鼻孔から息を吸って同様に保息し、左鼻孔から吐き出す。
これを左右交互に3回づつ繰り返すのだ。
マサさんは俺に「明日から3日間道場に篭る。これを飲んで寝ておけ」と俺にボトルに入った、ドス黒い色をした妙な味のする「茶」を飲ませた。
横になると俺はあっという間に眠りに落ちていった。

続く