[炎と氷]

今夜は、以前書くと言った、マサさんの元で行った「修行」の話。
「傷」の話を投稿した後すぐに書いたのだけれど、俺の文章力の問題で余りに長すぎたのでUPしなかった。
内容も少々問題があるし・・・
4月から10月の終わりまで手元にPCやネットのできる環境がなかったので放置してました。
かなり削って修正したけど、それでもかなりの分量になってしまったので2部に分けました。
毎度の事ながら突っ込み無用と言う事で。

話はマサさんの「結界の地」にいた頃に戻る。
マサさんの所に着いた晩から俺達は毎晩のように「霊現象」に悩まされていた。
日没を過ぎるとざわざわした気配と「声」が聞こえてくるのだ。
何を話しているのかは判らない。
夜が更けてくるにつれて気配はだんだんとはっきりしてきて、やがては肉眼でも見えるようになってくる。
それは、壁を這う黒い虫のように見える時もあれば、透明な靄の様に見えることもある。
3時頃をピークに増え続け、部屋を埋め尽くすのだ。
部屋を埋め尽くす「蟲」は俺達の体を這い回り、皮膚の下に
潜り込んで、シャリシャリ、プチプチ音を立てて俺達の肉を貪る。
むず痒いが痛みはない。
絶対に見るなと言われていたし、恐怖の為に固く目を閉じていた。
自分の体が食い尽くされ、骨にされたと感じた時に夜が明けて蟲どもは消えてゆく。
日の光に晒されて、やっと安心して俺達は眠る事が出来た。
そんな恐怖の夜は俺達を急速に消耗させた。
しかし、短期間でカタが着くはずの除霊は予想に反して長期化した。
俺達は呪いの井戸に精気を吸い取られ続けられていた。
このままだと「抵抗力」を持たない俺達の方が生霊の主よりも先にアウトだ。
マサさんが依頼者に修行を施す事は基本的にない。
危険を伴うし、「異界」を覗き、足を踏み入れた者は二度と元には戻れないからだ。
しかし、俺とPの消耗具合から、修行を施すにもタイムリミットが近かった。
マサさんは俺達に選択を迫った。
このままだと俺達は持って1週間。
それまでに除霊が完了すれば良いが、それは望み薄である。
このままだと井戸に飲み込まれるか、結界から出て取り殺されるかしかなくなる。
この地に留まって除霊の完了を待つには、俺達に修行を施して抵抗力を持たせる必要がある。
しかし、一度修行を行えば、一生こういった霊的トラブルから逃れられない体になる。
どうするか、と。
その時の俺達に選択の余地はなかった。
俺達は「修行」を選んだ。

続く