[秋のある日]
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そして薄ら寒くなった十時頃、「洞窟行きまっしょい!」とアッシーが背伸びしながら嬉しそうにこっちを見てきた。「そうだね。行こうか。」それ以外答えようがない。「で、ライトとかは?」不敵な笑いを浮かべる
アッシー「フフフ。この前100均で物凄く明るく光る電球を使用してるらしいライトを買って、そのままで車に置いて在るんだ。ちょっと待ってて!」
本当に用意周到だと思った。が、なかなか車から出てこない。しょうがないのでアッシーを呼びにいった。「どうかした?」引きつった笑顔で携帯をしまうアッシー「ライトは在るんだ。でもね・・・電池が無い」
アッシーの事を準備が良いと思った自分が情けなかった。ただ、本当に準備はしていたらしく電池も置いてはずなのだが、置いていた場所を探しても見つからない。なので母親に連絡してみたら、先週テレビのリモコンに使うため家に持ち帰ったらしい。
家庭の事で口を挟むつもりは無いが、行動の結果迷惑しているのが僕だと気が付いて欲しかった。が、そんな事思っていても仕方ないので鞄に入れていたMDの予備電池をアッシーに差し出した。
「おぉ!ありがとう!」アッシーの感謝の気持ちは有り難いが、プライベートで一緒に行動してこんな疲れる人だとは思わなかった。
やっと洞窟に入る準備が整った。その時すでに、いくつもの試練を乗り越えてきた初代ライダーみたいな気分だった。で、洞窟前まで場面は移る。

案内された洞窟の入り口には一昔前のダッチワイフの様な人形が立て掛けられ、彼女が看板を掲げていた。
[↑公衆便所by チ〇コジャンボ]
「何の看板だよ!!」大学では、おしとやかキャラを演じていたのに思わずそんな事口走ってしまった。ただByの後の空間が少し空いてる。気になったので近づいてライトを当ててみた。
[↑公衆便所byパチンコジャンボ]
「誰の悪戯だよ!!」またやってしまった。明らかに故意に、パ、の部分が削られていた。ただ削った奴が馬鹿なのか、パ、の形をそのままそっくり削ったみたいで彫った跡ですぐに、パ、だとわかった。

「ゴフン」わざとらしい咳払いをしてアッシーの方を見てみる。彼はダッチワイフの構造に夢中だった。「・・・・じゃあ行こうか」やっとアッシーは我に返った。
洞窟は横に狭く縦に長かった。100均で買ったという懐中電灯も大活躍だ。
入り口ですぐに地面が砂から岩に変わった。洞窟探索開始から五分ほどして空気に変化がみられた。冷たく乾いた空気から、冷たく湿った空気に。。
「カビ臭い」アッシーが口を開いた。「本当だね」まったくもって同意見だった。ただ人間の鼻は馬鹿だ。しばらく歩いたらすぐ鼻が麻痺して気にならなくなった。
歩いても先に壁がない。終着が見つからない焦りからか、どのくらい時間が経ったか気になった。十時半少し前。まだ十分も歩いてない。携帯は思ったとおり圏外だった。

『まだまだ旅は始まったばかりか・・・。』心の中で呟いた。
しかし、ゴールは意外と目前だった。そこから三分ほどしてソレと出会った。人間の白骨・四足歩行タイプの動物の白骨・鳥の白骨・・・・。他にもいくつか動物の白骨があった。
そんな異常な光景を目のあたりにして僕はプレデターを思い出していた。それらの骨格には共通して在るべきモノが欠けていた。頭蓋だ。
驚きを隠せず「なんだよ、ここ!」思わず声を張り上げてしまった。アッシーも「此処やばい・・・よな」とこっちを見てきた。
すぐにでもその場から走って逃げ出したかった。でも驚きと意味不明な恐怖で足が動かない。お互いにじっと前を見据える。すると暗闇に目が慣れてきたのか、奥に何かあるのに気付く。
ただ引き寄せられるままにその何かに近づいていく。

続く