[空飛ぶ円盤]

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「ちゃんとせえよ」。みっちゃんは私を睨んだ後
「せーので一緒に入れるねんで」と本当にうれし
くてたまらない様子でみんなに言った。私たち5人
がそれぞれマンホールの側に立って「せーの」と
声を合わせて、火の点いた爆竹を穴に入れた。
「どん」という音が重なって聞こえたが、音量は
一人で入れていたときと大して変わらなかった。し
かし、私が爆竹を入れたマンホールから真っ黒な
煙が出てきたのだ。

「お前、たまにはええことするなあ」と喜ぶみっちゃん。
他の3人も口々に私を賞賛してくれた。しかし、煙がどん
どん激しくなっていったので、「これ、ちょっとあかんで。
離れたところから見よう」と原っぱを出た。そのとき「どっ
か〜ん」とかなり大きな音がして、原っぱから煙がもくもく
と立ち上った。「空飛ぶ円盤や!」とのりちゃんの指差す方
を見るとUFOが3つ飛んでいた。私はもうその時点で目がウ
ルウル状態になっていた。

4人がいっせいに逃げていく中、小心者の私はその場に
凍りついてしまい、泣きだしてしまった。「円盤のおっ
ちゃんに捕まって、怒られて、拷問されるんや…」。
みっちゃんが戻ってきた。「あほう、あれはマンホール
が飛んどるだけや。早よ、帰ろ」と私の手をつかんで一
緒に走ってくれた。「なんや?」、「どないした?」、
「工事現場で爆発や」、「あんなところにマンホール落
ちとるで」、「そら、あかん。救急車、呼んだって」と
付近に住んでいる人たちが、わらわらと表に出てきた。

続く