[管狐]
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彼女の部屋の前まで行くと、中で彼女の絶叫と大きな物音が響いていた。
私「○○ちゃん!?」
私は彼女の部屋に飛び込んだ。
すると、彼女の声も物音も止んだ。
私「・・・○○ちゃん?」
私はゆっくり玄関を進み、彼女を探した。
彼女の寝室の前まで来た時、中から音がするのに気付いた。
カリカリ、カリカリ。
私「中にいるの?」
返事はなかった。
私はドアノブを回してドアを開けた。
彼女はベッドの上で、私に背中を向けるように体育座りしていた。
部屋の中はちらかっていた。
テーブルはひっくり返され、いつも綺麗にしてあった棚の小物は全て床に散っていた。
彼女は壁に向かって何かをしきりに呟いていた。
指を壁につけて、擦っているように見えた。
カリカリ、カリカリ。
彼女は爪で壁をひっかいていた。
私「○○ちゃん?大丈夫」
私はベッドの横に回りこんで彼女の顔を覗き込んだ。
生気を失い、深い隈をつけた目を、カッと見開いていた。
ゆっくりと彼女の首がこっちを向いた。
彼女「おばあちゃんの、狐が・・・」
私「キツネ・・・?」
彼女「あの音がする・・・カリカリって・・・憑かれてるの・・・」
彼女は正気をなくしているように見えた。
彼女「カリカリって・・・音が・・・ひぃぃ・・・」
彼女は膝に顔を埋めて、それきり黙りこんだ。
私は、彼女の言う音が、自分の爪で立てている音なのだろうと重い、彼女の腕を掴んで壁から離した。
彼女「・・・止んだ・・・」
それを言うと、彼女は座った姿勢のまま横に倒れこんだ。