[管狐]
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彼女「うん・・・実はね、昨日のメール、本当なんだ」
その時、電話の向こうで、彼女の声の他に何かが聞こえているのに気がついた。
カリカリ、カリカリ、と爪で何かをひっかくような音。
私「悪霊に疲れたって本当なの?なんでそんなことになったの?」
彼女「私が、おばあちゃんの言ったことをしっかり守らなかったから・・・」
私「言ったこと?・・・それって一体どんな・・・」
彼女「わ、私が・・・管をちゃんと整理しておかなかったから・・・」
私「クダ?一体何のこと」
段々とひっかく音が大きくなってきていた。
カリカリ、カリカリ。
私「ねぇ○○ちゃん。後ろで鳴ってる音、何?」
彼女「え?音?」
私「うん、カリカリって」
彼女「ヒッ!!」
彼女は小さく悲鳴を上げると、電話を切った。
いや、今思うと「何かに」切られたのかも知れない。
その後何度か彼女に電話もしてメールもしたが、返事はひとつとしてなかった。
その日から、彼女は学校で全く姿を見なくなった。
授業中も、いつもいる談話室にも、彼女はいなかった。
彼女と全く連絡が取れなくなって5日が過ぎ、心配で堪らなくなった私は彼女のマンションを訪れた。
私がマンションの入り口に入ろうとする直前、携帯が鳴った。
彼女からの電話だった。
私「○○ちゃん?授業に全然出てないけど、どうしたの?」
返事はなかった。
でも、電話の向こう側から何か聞こえていた。
爪で何かをひっかくような音と、何かの声。
ごにょごにょと何かを呟いているような、不気味な声。
私「どうしたの?今マンションの前にいるんだけど、何かあったの?」
彼女「・・・来ないで」
私「え?」
彼女「く、来ると、あなたも憑かれてしまう。」
私「一体どうしたの?憑かれるってなに?」
彼女「私みたいに・・・つ、憑かれて・・・しまうから、だめ。
彼女の声とは別に、あの呟くような声がしていた。
私「今、誰かいるの?」
彼女「い、いない。誰も・・・誰も・・・ひゃあああ!!」
彼女のつんざくような悲鳴がした。
私はエレベーターに乗って彼女の部屋の前まで急いだ。
私「どうしたの!?何があったの!?」
彼女「いや!あの音がする!!誰かいる!!!」
私がエレベーターに乗っている最中も、彼女は何かに恐れおののき絶叫し続けていた。