[管狐]

昔から霊感があると自称している同級生(♀)がいた。
大学生になった頃になっても彼女は時々「霊が見える」だとか「あそこには良くないのがいる」だとかよく言っていた。
日頃仲良くしている私は、そんな彼女の言葉を聞いてか聞かずか、「そうなんだぁ、怖いねぇ」などと軽く聞き流していた。
高校の頃から一緒で、霊を感じると言い張る彼女にずっと半信半疑だったが、この前それを決定付ける出来事が起きた。

先々週の日曜日。
バイトが終わり少々疲れていた私は、携帯を見るのを忘れて床に着いた。
目が眠さでまどろむ頃に携帯を見た。
彼女からメールが来ていた。

Sub:無題
本文:悪霊にとりつかれたかもしれない・・・

私は彼女のメールに寝たまま首を傾げながら、何があったの?と返信した。
その日、彼女からの返信はなかった。

次の日。
大学の経営学の授業で会った彼女は、いつもより少々やつれて見えた。
私が昨日のメールについて聞くと、
「あぁ・・・何でもないよ」
と言ってそれきり黙りこんだ。
私がそれでも彼女を心配して聞き続けると、
「・・・あなたに憑いちゃダメだから」
私はなんだか背筋が寒くなった。
正直な話、私は霊の存在なんてほとんど信じちゃいないけれど、その時の彼女の顔と口調は嘘を言っているようには思えなかった。

授業が終わり、彼女と別れ帰途につくと、彼女からまたメールがあった。
「今日はごめんね」
悩み事があれば相談に乗るよ、と返信して携帯を閉じた。

変化は次の日の夜に起きた。
部屋で漫画を読んでいた時、彼女から電話が来た。

私「もしもし?」
彼女「あ・・・今大丈夫?傍に誰かいない?」
私「いないけど、どうしたの?」
彼女「ちゃんとよく見て。黒い影とか気配とかない?」
私「大丈夫だよ。どうしたの?」

彼女は何かに慌てている様子だった。
声に生気が無く、でも何かに急かされているような。

続く