[猫かい?]
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ドキッとしました。
くるっと振り返ると目の前にその声の持ち主、Wさん宅のおばさんがいました。
『いつの間に後ろにいたんだろう…さっきまでは誰もいなかったのに…』
『猫かい?って見てたんだろか?でも黒猫が通り過ぎた時はおばさんはいなかった…』
そんなことをグルグルと頭の中がめぐっていました。

「うふふ。猫なんだろ。」

暗闇の中でWおばさんがニタリと笑いながらまた言いました。
よく見ると何かいつものWさんとは違う顔をしています。
もともと目の細いひとでしたが、目じりがキッとあがっていて
『猫みたいだ…!』瞬間的にそう思いました。
ニヤッとした口元もやけに赤く大きく見えました。
『何かいやだ!13歩戻ったし急いで帰ろう!』

「え、ええ。それじゃ…さよなら」
それだけ言って家に向かってダッシュしようとした時!

「ねぇこぉ!あーっはははははははははっ!!!」
「あーっははははははっ!」
いきなりおばさんが大声で笑い出したのです。
『怖いっ!』
暗闇での笑い声。恐怖が完全に体を支配していました。
もう後ろを振り返る余裕はありません。
体中に鳥肌を立てながら全速力で走りました。
遠ざかりながらも笑っている声が聞こえてきます。

「…アーッハハハッ…」

とにかく走りました。
時間にするとホントに十秒ぐらいだったと思いますが、
『早く家に!早く家に!』とだけ考えていました。
そして…
「ただいまっ!はあはあ…」
家に飛び込み息を弾ませている私を見て母がきょとんとしてこう言いました。

「どうしたの?猫?」

続く