[小学生の集団]
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時間は夜9時頃、外にはもう車も殆ど通っておらず、海沿いの道に街頭がぽつぽつと 
あるだけの場所を15分ほどあるくと、意外に早く「目撃現場」に到着する事が出来た。 
昼間は気付かなかったが、テトラポットのある海岸の手前に、どうも何かの資材置き場? 
と車4,5台停めれそうな広場があり、懐中電灯で照らしてみると意外と広い場所 
である事が解った。 
Yが、「だいたいこっちの方向から反対側の山を見ていたんだよな」「丁度こんな感じ」 
と言ってテトラポットに乗って現場検証みたいなことをしていると、Sが、「おい、こっち 
来てみろ」と、広場の反対側の端のほうへ俺達を呼び寄せた。 
行ってみると、その場所には何か道祖神とも地蔵とも違う、変な少し大きめの石像が 
木造の祠の中に置いてあって、石像そのものはかなり古めかしいのだが、周囲はきれい 
に整備されており、お供え物とか御札?のようなものもおいてあった。 
暫く各々が好きなように散策し、俺が祠の横のほうにまわって色々見ていると、そこの奥の林の 
ほうから何か人の話し声がする事に気がついた。 
暫くしてSとYもその事に気付いたらしく、耳をすまして聞いていると、何か子供とも大人とも 
判別付かない女性の声で 
「……る……待った」「…はた…よ」 
と、繰り返し喋っている事がかろうじてわかった。 
俺もSもYも気味悪くなり、後ずさりして逃げようとしていると、「声」がこちらに気付いたらしく、 
茂みがガサガサと揺れ始め、さっきの声がどんどん近くなってきた。 
更に、「声」はさっきのくりかえしから段々と赤ん坊の泣き声のような、或いは動物の 
鳴き声のようなものに変わり、しかもあちこちから複数聞こえ始め、おまけに何か動物園に行った 
時に臭うような獣臭までし始めた。
俺達は流石に皆今洒落にならない事態に陥っている事が自覚でき、Sが「これ何かやべーよ!逃げろ!」 
と叫んだのを合図に全員全速力でダッシュ、広場を抜けてガードレールを飛び越え、民宿のほうへ 
猛スピードで逃げ出した。 
暫く走って、街頭のある明るい場所で息を切らして、あまりの出来事に全員無言で休憩していると、 
俺達が逃げてきたほうから60代くらいのお爺さん2人と、40代くらいのおっさん3人が「お前らこんなところで何 
してる」「○○(聞き取れず)行ったんじゃないだろうな?」と大声で問い詰めながらやってきた。 
俺達は全速力で逃げてきてヘバっていたし、別に何か悪戯したわけでも無いので、小屋と 
祠みたいなものがある場所になら行ったと正直に話すと、お爺さんのうち1人が真剣な顔で「お前らどこから 
来た、ここのもんじゃないな?」「何を見た、正直に言ってみなさい」と、問い詰めて来た。 
すると、もう一人のお爺さんが「ここじゃ○○(また聞き取れず)にも近いし、とりあえず公民館に行こう、そこで 
ゆっくり話して貰おう」「○川が神主さん呼びに行ったから、公民館で合流しよう」と促した。 
公民館へつき、それまでにSが民宿の事なども話していたので、民宿のおじさんもやってきており、更に 
さっきの人たち以外の町の人4人、それと神主さんらしき人も集まりだし、俺達は何か大事に巻き込まれた 
なじゃないかと、今更ながら不安になってきていた