[苦焼女]
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B「貴方を見つけてあげたい、でも動けない。それに、大事な部分が聞き取れない」
K「……」
B「自分の身体の傍にいれば、いつか一緒に火葬場に連れてってもらえるから。そうじゃないと、いつまでもこのままだ」
(それから、何度も元の亡骸の場所に戻るように説得を試みました)
K「嫌だ」と言った気がしました。やはり、だんだん聞き取れなくなって突如女性が背を向けてしまいました。
B「身体のある場所は、悪い所にあるのかい?何か、居るのかい?」
K「……」うなづく仕草。もう、喋ろうとはしないのかと思いました。
B「貴方は自分のような力があるのか?」
K「無かった……連れて来られた」
緊張が走りました。
自分の場所は霊的な場所を寄せ付けないようにしていますので、汗がたらたら垂れました。
B「連れて来られた?」
K「……連れて来られた」
B「○○○(関係)か?」
K「違う……」
B「何だ?」
K「……待ってる」
どういう意味の「待ってる」かは解らずじまい、それ以上の対伝は無理と判断して止めようとしました。
誰に連れて来られたのでしょう。もう独り、近くに存在するのでしょうか。それとも、彼女がそう思っているだけで、単に「送られてきた」だけなのでしょうか。
話が展開せず、思わぬ脱線でした。Kが誰かに連れて来られたのが自分の家。
あまり、重要に思えなかったので(深く考えて余計にKを留まらせてはいけないと思いまして)、Kに供物を与えました。
B「次来るまで、それじゃ足りない。貴方は面倒を見てもらっている人がいるんだね?」
K「……いる」
B「誰だ!」
K「弱い……喋れない……」
(全く同業者に面識が無いので唖然)
B「貴方を喋れるようにした人が代わりに喋れなくなったのか?」
K「もともと……見えるだけ……」
(つまり、彼女の存在は認識出来るがコミュニケーションが取れなかったという意味だと最初は思いました)
B「今は喋れるじゃないか」
K「……喋れない……ここで喋る……」
B「それは助けてあげられない。無理」
K「……喋る……喋る」
B「最初に手を出した人しか手を出せない」
K「嫌だ」
B「もう、来るんじゃない」
K「来る……」
B「どうして、こだわる?助けてあげられない」
嫌がらせなのか、何故(今の所)非のない女性を振り回しているような気がして、とても嫌になりました。