[呪いの連鎖]
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あの木があるとこれからも良くないことが起こるのではないか、
木を切り倒したほうがいいのでは。みんなが口々に木のせいにし始めていた。
それでも誰も木を切ろうとはしなかった。
しばらくして自殺したおばさんの遠縁にあたるという男2人がやってきて
自分たちがこの木を処分しますと言ってきてくれた。

念のためにと2人はお払いをしてもらい、それからチェーンソーを使って
あっさりと切り倒してくれた。かなり大きな木だったこともあり
倒した後、細かくするのに時間がかかってしまい根の部分は
後日にするということだった。
それから数日が経っても根が掘り返されることは無かった。

木を切り倒した人の一人は、酒に酔い3メートル程の側溝に頭から
落ちてしまい脳挫傷で死亡。もう一人は噂では農作業中にトラクターが横転し
下敷きになり死亡したと聞いたそうだ。
Aが高校を卒業して町を離れる頃にもまだその根は残っていたそうだ。

俺とAが出会ったのは同じ専門学校でのことだった。
Aとはそれ以来の付き合いになる。Aは俺とは違い頭も良く性格も良かった。
そんな奴だから就職にも困ることはなかった。俺と違いAはすぐに就職した。
Aが就職してからも俺たちの付き合いは続いた。会うたびに女のことで
説教をされていた事を今でも思い出す。

就職して3年ほど経過した頃だろうか、それはあまりにも突然だった。
Aの父親が心臓発作で他界した。Aが言うには病気など患った事など
無かったからもの凄くショックを受けたらしい。

Aが実家に大急ぎで帰ったとき、すでに二人の兄が帰って来ており
通夜の準備に追われていたそうだ。
それから数日が経ち、葬儀も終え3人は久しぶりに実家で酒を飲んだそうだ。
その時に長男が二人の弟に語りかけた。「二人ともあの家の木を見たか?」
そう言われてAは次男と顔を見合わせて「何のこと?」長男に聞き返した。

根っこだけ残ってた木のことだよ、そう言われて二人はあの木のことかと
思い出したらしい。長男は続けた、「もう更地になってるんだよ。」
そしてあの木の根を掘り出したのが親父なんだ。それを聞いたAの中で
眠る忌まわしい記憶が蘇ってきた。

次男はいきなり怒気を強めて長男に食ってかかった。
「ふざけるな、じゃあ親父はあの木に祟られて死んだっていうのかよ、
ただ掘り返しただけで祟られるのか馬鹿げてるぞそんなもん」
しばらくみんな黙っていた。

Aは疑問に思ったことを口にした。「何で親父は木の根を掘り返したんだろ、
兄貴は何か聞いてない?」その問いに対して二人の兄は首を振るばかりだった。
長男は首を振りながら「掘り返した理由は俺にもわからん、だけど掘り返した後、
親父は突然死んだ。どうしても俺には偶然には思えないんだ」
次男は「兄貴やめてくれないか」そう言って話を遮ろうとしたが、
それでも長男は話を続けた。「昨日さ夢に親父が出てきたんだ。
俺を見ながら何度も、すまないすまないって言うんだよ」

それを聞いた次男は「何で兄貴の所だけに出て俺たちの所には出ないんだよ」
Aを見ながらそう語りかけた。その問いに対して長男から出た言葉に二人とも
驚いたらしい。「次は俺なんじゃねーの、だから親父は俺に謝りに来たんだろ」
二人はそれを聞いて押し黙った。その日はそれ以上そのことを3人とも
語ろうとはしなかった。

続く