[まとわり憑く女]
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「エーコ、今、タイ子は何してる?」
「もう行っちゃったよ…」
「はぁ?国に帰ったのか?いきなりすぎるだろ?」
「ウン…でも、行っちゃった。ホントよ。」
ずいぶんと早い展開だと思ったりもしたが、文化の違いとか就労ビザの関係か?
なんて考えていた最中に、俺はいつのまにか寝てしまった。
朝起きると、エーコは俺の隣にちゃんといた。相変わらず笑顔で、あの事件も、
俺と関係を持った事も、まるで何も無かったような屈託の無い笑顔だった。
「帰ります。いいですか?ロー○ンまでいいですか?」と、エーコが言い出す。
「いや、Sの親父さんのとこに行こう。俺とエーコだけでも行こう。」
「無理ですよ、もう無理ですよ。帰ります。乗せてください。」
「だめだ!」
「だめですっ!ホントーにもうだめです!」
エーコの気迫に押されてしまい、結局ロー○ンまで送ってしまった。結果、俺は
エーコと「やった」だけだった。
事務所に行き、コーヒーを飲みながらぼんやりと考える。
タイ子はもういない。エーコもいなくなる…じゃあ…Sにとり憑いてた、あの女は
いったい今どこにいるんだ?タイ子と一緒にタイに行っちまったのか?
考えれば考えるほど、矛盾点がどんどん出てくる。俺はこれらの疑問点や矛盾
している点をメモに全て記入した。やっぱりおかしい…
俺はSと合流するまでの間、さまざまな仮説を立てた。あんまりにも物事が急
すぎる点、タイ子は?と聞いた時のエーコの反応、逆に、タイ子にエーコは?
と聞いた時のタイ子の反応、なぜエーコはSじゃなくて俺に会ったのか。
そう、流れで言うと頼るのはSのはずだ。どこをどう考えても、客観的に物事を
考えても、どんどんやばい方向へ話が進んでいく気がしてきた。
そもそも、Sがタイ子に電話した時、出たのはタイ子ではなくエーコが出た点も
気になる。ホントなのか、Sの単なる誤解なのか・・・
昼頃、Sから電話が入る。
「どうだ?T、なんか動きあったか?」
「あぁぁ…エーコと会った。んで、親父さんのとこ連れて行こうとしたらさ、ものす
ごい勢いで拒否された。仕方なく家の近くまで送ってった…」
「マジかよー、頼むよ!んで、タイ子について何か聞いたか?」
「国に既に帰ったってエーコは言ってる…」
「そっかぁ、なんかおかしぃーなー。まずはどうやってタイ子が帰ったかの確証を
得るかだな。まぁ、でもその話しがホントだったら、俺の胸のつっかえ取れるし、
キモいババァもあれから見ねぇーし。このままいけば俺は万々歳だ。」
「Sは何時に仕事終わるんだ?今日も行ってみるか?店に。」
「そうだな、3日連ちゃんになるけどしゃーねーな。タイ子の確証取らんとな。」
軽く飯を食った後、店に行く。と、早速女の子に話しかけられた。
「タイ子もエーコも来てないよ。お兄さんたち、なにか知ってるでしょ?」
「おいおい!俺らはなんも知らんから、逆に心配なんだよ。」とSが言う。
「ごめんなさい。すみません…」
「いや、こっちこそ悪かった。で、二人とは連絡取れないの?国に帰ったとか
そんなんじゃないのかい?エーコと電話はつながったんだ。そしたら国に帰る
とか、タイ子はもう帰ったとか言ってたけど。最後にエーコに会いたいって事で
俺らはこの店に来てるんだ。」と俺。
「かえった?ないです。ないですよ。なにも言ってないよ!聞いてないよ!」
続く