[まとわり憑く女]前頁

変な予感的中…まぁ、当たり前か。

早々に店を切り上げて、俺の事務所で飲み直す。出た結論は、少し間を
置こう、無理に会おうとしないでエーコとタイ子に電話をかけよう、様子を見
ながら最終的にはSの親父さんの必ず会わせよう、となった。

夕方と夜中、時間を決めて俺はエーコに電話をかける。Sはタイ子に電話をかける。
もう出ないだろうなーなんて思いながら、発信ボタンを押すが、やっぱり出ない。
何度か繰り返したら、二日目(事件から五日目)の夜中にエーコとつながった。
「エーコか?」
「そーですよ。Tさん、あなたは元気ですか?」
「あぁ、元気だよ。エーコ今は店か?何してる?電話してても大丈夫か?」
「今は自転車乗ってますよー。大きな川の橋の上渡ってますよ。」
「なんじゃそりゃ?こんな時間にかぁ?」電話越しに別の携帯の着信音が聞こえる…
「そーですよ。こんな時間ですよ。でも、会うのは無理です。ごめんなさい…」
「大丈夫だよ。それより、今からどっか行くのか?自転車なんか乗って」
「はい・・・ゴミ捨てに来ました。いらないものたくさんあります。もう来れないから、
全部いらないです。」
「川に捨てるなよなー、不法投棄でつかまっちまうぞ」
「ゴミは捨てませんよー、川には魚のえさあげますよー」
「そっかぁ。なんだかよく分かんねーけど、自転車なんだから気をつけろよ!まぁ、
また電話するからさ、エーコ、暇なときはすぐ電話くれ。」
「はい、わかりました。暇なときは…電話します」

電話越しに聞こえた別の携帯の着信音は、Sがタイ子にかけた時に鳴った着信音
と一緒だった・・・下らないと思い始めてきた、様々な仮説が頭を思い巡らす。

しかし、これが俺とエーコとの最後の電話となった。

事件から七日後の朝、「今日は仕事をしよう!」と少し早めに事務所に向かう。
鍵を開けようとしたその時、男二人に声をかけられた。
「○○○○のTさんでしょうか?少しお話を聞きたいのですが…」
俺の会社名を言ってきたので、てっきり仕事上の話だと思い「どうぞどうぞ」と、ち
らかったままの事務所に入ってもらう。しかし、その男の口からは信じられない言葉
が飛び出した・・・

「○○○・○○○○○、店での源氏名「エーコ」知ってますね。あなたと彼女は
どのようなつながりで、どの程度の関係があるのか私は知りたい。」

その男二人は刑事だった…

続く