[人型焼き]
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「明るく成るまで、だ〜れも気付かんかった」
「それもその筈、人形は誰が乗せたか本殿の屋根の上に置かれていた」
「これには神社の者も心底驚いた」
「何せ人形はマネキンだ。成人男性くらいは有るマネキンを高い本殿の上に持って行くのは、容易ではない」
「大一、悪戯にしては手が込んでるし、あんなトコにやる理由が判らん」
「兎も角、考えててもラチが明かんので、マネキンを下ろす事にした」
「だが梯を登って下ろす最中に、マネキンを抱えた男が足を滑らせマネキンと一緒に落下した」
「男は足を折ったらしく、すぐに病院に運ばれて行った」
「男はしきりに『人形が噛んだ』『人形に噛まれた』と訴えて居った」

「これはいかんと、神主が慌てて型焼きの準備をし、今に至る訳だ」

「随分詳しいんですね」
にわかには信じられない話だったし、完全に疑ってる訳では無いが、ちょっと意地悪してみた。

「毎朝ここを散歩していてね。マネキンを下ろす処からずっと見ていた」
成程。

おじいさんの話を聞いてる内に準備は着々と進み、さぁ火を着けようかと言った感じだった。

神主さんが突然掛け声を上げた。

それに続いて袴姿の男達も一斉に呪文?お経?の様なモノを唱えながら火を持ち、箱を囲んだ。

よく見ると箱は、針金の様な物でグルグルと巻かれていた。

一人目の袴男が、箱の四隅の木組みに火を灯した。
チリチリと煙を上げ、やがてゴウゴウと燃え出した。

それに続いて二人目、三人目と、とうとう箱を除く全ての木組みに火が灯り、激しい火柱を創った。

50〜60mだろうか?結構離れているこちらにまで熱気が伝わる様だった。

最後は、神主さんが真ん中の木組みに、松明を投げる様な感じで火を着けた。

四本の木組みの中には、木の葉が入れてあり、白い煙をあげていたのだが、真ん中の箱の辺りからは黒い煙がモクモクと沸き上がっていた。

「うっ…!!」
俺は思わず鼻を摘んだ。
いつの間にか、今までかいだ事も無い様な獣の様な異臭が辺りに立ち込めていた。

神主達の声が一層大きく成った気がした…次の瞬間!
ぎょぇぇぇぇ〜!!ぎゃあぁぁぁぁ〜!やわなは@〇※▽@◆…
声に成らない叫び声と言うか、今まで聞いた事も無い悲鳴が広場の静寂を引き裂いた。
と、同時に箱がガタガタと激しく揺れ出した。

情けない話だが、正直俺は腰を抜かしそうだった。
走って逃げようかとも思ったが、足が動かない…完全にすくんでしまった様だった。

箱はバンバンと内側から叩かれて、炎に包まれて居る。
ひょっとして人殺しなんじゃ…とも思った。

凄惨な光景だった。
火はゴウゴウと燃え、箱はガタガタと揺れ、神主達は声を上げ、悲鳴はやがて言葉に変わって居た。

続く