[人型焼き]
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奇妙な一行は本殿の裏に消え、後から神主も出てきて、またもや裏に消えて行った。 
ふと気付けば、自然と本殿の方に歩みを進めている自分が居た。 
警告に対する恐怖心よりも、好奇心が勝っていた。 
此処まで来たら、見るしかない。 
本殿の脇の道を進んでいく。 
道は木が生い茂り、薄暗く、苔がむしている。 
少し進むと、前方が開けた広場の様な場所に出た。 
神主達は慌ただしく、なにやらキャンプファイヤーの木組みの様なものを、四方に作っていた。 
真ん中には、件の箱が一番頑丈そうな木組みの上に置いてある。 
神主と目が合った。 
怒られるかと思ったが、別段気にも停めない様子で作業を続けていた。 
何だか許可を貰った気に成ったので、木陰から広場に踏み出した。 
何が始まるのだろうか? 
期待と不安でソワソワしながら事の成り行きを見守って居ると、視界に人が映った。 
神主でも袴姿でも無い。 
普通のじいさんだ。 
俺の右、20mくらいの所に立ち俺と同じように神主達をみていた。 
俺はおじいさんに近付き、話掛けた。 
「すいません。今から何かあるんですか?」 
「人型焼きだよ」 
おじいさんは、気さくに答えてくれた。 
「今から人形を焼いて供養するのさ」 
「人型焼き…ですか」 
予想はしてたが、当たりだ。 
今日来て正解だった。面白いモノが見れそうだ。 
それにしても、何でこんな時期に? 
俺はてっきり、こう言うのは年末とかの締めにやるモノだと思っていた。 
だが今日は特に特別な日でも無い。 
「いつも見に来るんですか?」 
おじいさんに尋ねた。 
「いつも人型焼きが有るわけじゃないからねぇ。いつもはこんな時期にはしないし、こんなに大きな人形を焼くのも初めてだ」 
少し間を置いておじいさんが答えた。 
「今日は特別なんだ」 
もう一歩踏み込んでみる。 
「『特別』って何かあったんですか?」 
俺の問掛けに、初めて少しだが表情が曇った。 
地雷を踏んだか?…と思ったが、じいさんは暫く考えた後に口を開いた。 
「信じられん話かも知れんが」 
そう言う話なら大歓迎である。 
「実はな、あの人形は元々本殿の脇に在る倉庫に厳重に保管されとったものだ」 
「だがしかし、今日の早朝、3日振りに神主が倉庫の点検をした時、あの人形が消えとった」 
「神主と神社の者が総出で探し、日が明るく成った時にやっと見付かった」 
「何処に有ったと思う?」 
何なんだ?勿体ぶらないで欲しいな。 
…と思いながらも、乗ってやった。 
「何処に有ったんですか?」 
続く