[窓]
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意地の張り合いの続く中、京介のアパートに泊まり込んで1週間が過ぎた真夜中、
やはり酒が入ってるのですが、京介の様子が突然変わりました。
何だか、辺りを見渡してソワソワし出したのです。

「どないしてん、もう限界なんとちゃうん?」
俺は持ち込んだエロ本でも効いたのかと思ったのです。
京介は黙ったままキョロキョロと辺りを見渡し始めました。
当然、いつもの京介と違う。どうかしてる。
まるで何かが部屋の中に居るかの様に…探して…(探してる?

「何してんの、気持ち悪いなぁ、演技やろ、それ」
そう言ってる最中、京介はある一点を見て固まっていました。
窓の方、カーテンの隙間…。
「え、誰か、おんのか?」尋ねても京介は返事をしませんでした。
目は見開いたまま…。
そして、いきなり走り出し、カーテンを開きました。バッ!

「何か、おったんか?」あまりの京介の奇怪な行動に不気味なものを感じました。
「な、なんもあらへん…」
そう言って、京介はそのまま布団にもぐり込んで、寝てしまいました。
俺は直感的に、京介は何か隠してる。この部屋に何か居てるんじゃないかなと疑いました。
もしかすると、俺も京介と同じ様に「それ」を見ることになるかも知れないと、覚悟を決めました。

明日の朝で2週間目という日が、ついにやって来ました。
京介はここ数日、何かをブツブツつぶやくようになっていましたが、賭けは賭け!
ここで、情けをかけると今度は俺がカモられる。これも、奴の罠かも知れないのです。
毎晩、京介が窓の方を見ているのが、やけに気にはなっていたのですが、俺には何も見えない。
絶対に芝居だ!と確信していました。
京介はオナニーをしてないので、あまりに溜め過ぎて敏感になってるらしく、
すぐに立ってしまう息子をかかえて四苦八苦していました。

その晩、京介の部屋で「禁オナニーマラソン完走祝勝会」を開いていると、
いつもの様に京介はキョロキョロし始めました。(…またか!
「もうええっちゅうねん!お前の勝ちや!朝になったらやけどな!じっとしとけ!」
俺は、我慢の限界が来て京介に怒鳴りました。
しかし、今度は京介が叫びました。「お前、まだ気付かへんのか?窓の外に何があるんか!
お前には、わからへんのか!」京介は目を見開き、口をバカっとあけたまま窓を見ました。

続く