[海外で乗ったエレベーター]
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そこは、まったくのがらんとしたスペースでした。
窓側はすべて光がふさがれており、遠くは見ることもできません。
吹き抜けからの淡い光だけが頼りです。
多少の光があることを頼みに、少しエレベータから出てみました。
手でエレベータの挟まれ防止用の部分を抑えたままです。
しかし、ドアがしまりはじめました。
なぜか、挟まれ防止用の部分を抑えていても、どんどんドアは
しまります。もう体をいれる余裕もなかったので、エレベータは
しまってしまいました。

すぐに下りのボタンを押しましたが、なんとランプがつきません。
エレベータは無情にも1階に降りていってしまいました。

なんども下りボタンを押しますが、反応がありません。
あきらめて、回りを見渡しました。
少しは目が慣れたのか、遠くにエスカレータが見えます。
吹き抜けから離れるのはとても嫌でしたが、外国のことで
助けをもとめることもできず、降りるよりしょうがないと
近づいていきました。

元々は婦人服売り場ででもあったのでしょうか。近づくと、
ハンカチらしきものや、マネキンの残骸のようなものも見えてきます。
なるべくマネキンには目をやらないようにしました。
エスカレータはもちろん止まっています。乗り口に木が置いてありますが、
乗り越えられる程度です。ベルトにつかまり、金属の段をカツンカツンと
いう音をたてながら降りていきました。
外は30度近くあるというのに、妙にすずしく感じます。
5階、4階と降りていき、多少明るさが増してきたことで足取りを
早めました。4階から3階のエスカレータに移るとき、視界の隅に
おかしなものが見えました。

空中にアーモンド型の白いものが2つ。それが2体。
目・・・ のようでした。
それ以上はみていません。脱兎のごとく駆け下りて、
なんとか人のいるところに出ました。

今から思い直すと、作業員の人かも知れません。
でもそれなら服もきているでしょうし、だいいちタイの人は
そんなに色黒ではありません。

何かの見間違いなのかもしれませんが、
南国の真昼と真っ暗闇というミスマッチ、
異国であることと言葉が通じないこと、
上では動かないエレベータなど、非常な恐怖感を
味わいました。

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