[まだ死なないよ]
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翌朝、登校の時間になっても起きてこない私を起こしに来た母が
高熱を出してひっくり返っている私を発見した。
私は40度の熱を出していた。
寒い、苦しい、目が回る…
激しい吐き気で体は水さえも受け付けない。
次から次へと幻覚や幻聴を感じる…
…ああ、俺、死んじゃうのかな?

その時、確かに私はその声を聞いた。
「まだ死なないよ。今はね…」
気が付くと私は天井から自分の部屋全体を見下ろしていた。
家具の配置や部屋にあるものは微妙に違っている。
見知らぬ男が机に向かって何かしている。
短髪で背中が広い、黒いスウェット?を着た知らない男…
ああ、コイツは俺だ!
その時、その「男」がこちらに顔を向けた。
私は恐怖から手で顔を隠そうとした。
その拍子に私は腕に何かを引っ掛けて落としてしまう感覚と共に「意識」を失った。

三日後、私は目を覚ました。
目を覚ました時、最初に私は恐る恐る箪笥の上に視線を向けた。
しかし、そこにはあの阿弥陀如来像はなかった。

それから10数年いろいろなことがあった。
私は3度ほど命を落としてもおかしくない大事故に遭遇し、
多少の怪我はしたが五体満足で生き延びてきた。
軽自動車でトレーラーの多重事故に巻き込まれたときも、
バイクで160km/h以上のスピードでクラッシュしたときも、
建築現場での事故に巻き込まれたときにも、
スローモーション映像の中で「まだ死なないよ」という声を聞いたような気がする。

そして、昨年末…
忘年会から帰った私は残務を片付けるべくパソコンを立ち上げて作業をしていた。
家人が皆寝静まった深夜、何か異常な気配を感じる。
そう、すぐ後から誰かに覗かれているような気配。
誰かに見られている?
全身にぞわっと鳥肌が立つ。
猛烈な寒気と耳鳴り。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…
その時、背後でゴトッと高い位置から床へと何かが落ちる音がした。

私は恐る恐る音のした床の方を見た。
そこには、紫の紐を頭につけた真っ黒な仏像が落ちていた。
そう、消えた「あの」阿弥陀如来像…
阿弥陀如来像を拾い上げた瞬間、私の脳裏にフラッシュバックしてきた光景、
そうそれは、小学校時代に祠からあの仏像を持ってきた光景、
そして、中学校時代に高熱にうなされながら見たあの光景。
そして、頭上に気配を感じて私が見上げると、箪笥の上に確かに見た。
中学生くらいの子供の顔を…
目の部分は黒い影に覆われて見えなかったが、確かにあれは私の顔だった!
その顔を見た瞬間私は意識を失った。

私はまた40度近い熱を出して寝込んでしまった。
周りはインフルエンザだノロ・ウイルスだと騒いでいたが、倒れて5日ほどで私はどうにか回復した。
熱にうなされている間に様々な幻覚や幻聴を感じた。
その中で脳裏にこびりついてはなれない夢がある。
スーツ姿の男が二人の男に捕らえられ、腹を刺されて血の海に崩れ落ちる。
男の手には何か黒いものが握られている。
息絶える男と私の目が合った瞬間、私の記憶は途切れ私は目を覚ました。
あの男、私より幾分年上で髭を伸ばしていたけれども、あれは私ではなかったか?
あの時、確かにあの声を聞いたような気がする「 」と


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