[車椅子に座るモノ]
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なんで電気をつけないで入ってくるんだろうとか、そんなことを考えていられる余裕はなかった
暗闇でも慣れると割りと物が見えるようになるんだ
それで近づいてきた車椅子を見てたら・・・座ってる人の頭がなかった
恐くて俺は座り込んで後ずさりしたんだ。
あ、って声も出せなくて金縛りにあったようにのどが引きつったようになって
それで看護婦さんの方を見ると両手を頭に添えてて
いきなり頭を抜いた

ちょっとこのとき聞いた声はぼやけた感じで正確には覚えていないけど
笑うような、楽しそうな声で
『もうこれにも飽きちゃった・・・』
そういうような声を聞いたんだ。子供のような声でそう聞こえたんだ
そして頭のない看護婦さんが抜いた頭を捨てて、今度は僕の顔に添えた・・・

それで目を覚ましたとき自分の病室のベッドにいたんだ
夢だったんだ。良かったって思った。
本当に夢で良かったって最初は思ったんだ
でもね・・・おかしいんだ
夢だ良かったって思ってるのにね
本当にあったんだって理解してるの
それでトイレに確認しに行ったんだよ
あれが夢だったのかどうだったのか

俺はトイレの個室を使うときは一番手前って決めてたんだ
近い方が楽って思ってたんだよ
だから一番奥の個室に行くことはないんだ
トイレの個室が全部埋まるなんてことなかったしね
だけど一番奥の個室を空けようとしたときにね
ぬるっとした感触がしたんだ
変だなって思って手を見てみると血みたいな赤い何かがべっとり付いてた
ドアノブひねってて、気持ち悪いって思いっきり手を引いたら扉が開いた

そこの壁中に赤い文字で「助けて!」て書かれてたんだ
それで恐くて手洗い場まで戻って手を洗ったんだ
そこで気づいた
首の辺りに人の手形のようなアザがついてることに・・・

これで病院での体験談の一つは終わりだ
以降はこの話の後日談の話をしようと思う

そこの病院は一号棟二号棟と分かれてて一号棟を本館、二号棟を別館と呼んでたらしい
俺が入院してたのは別館だったんだが、数年前に規模の縮小だとかで現在使われてないんだ
それで今は立ち入り禁止になってるらしんだが、ちょっち秘密で入ってきた
それはさておき、当時から働いている人から聞いた話から話そうと思う
俺が入院するちょっと前に俺と同じように手術を受ける子がいたんだそうだ
名前とかはなんか大人の理由で教えられないらしかったが体験談を話したら
事情は教えてくれた
簡潔に言うとその子(男か女か不明・子って言ってたので子供と思われる)は
手術の最中に事故だかなんだかがあったらしくて、結果を言うと失敗したらしい
一命は取りためたらしいんだけど余命幾ばくかしかなくて悲しそうというより
絶望してるというような感じだったらしい
手術から数日たたずにその子は病院の屋上から飛び降りて自殺したらしい

その自殺があった後にトイレに件の血文字みたいなのが書かれてるのに気づいて
清掃員さんが気持ち悪いからと掃除したらしいのだけど落ちなかったらしい
最初はぼやけてる感じだったのもいつしかはっきりと『助けて』って見えるよう
になったそうだ
それでなんかその自殺した子と仲がよかったらしい看護婦さんがいたらしいんだけど
その子が自殺した後に交通事故で亡くなったらしい。ここいらは噂話の線を越えないが
もしも・・・この看護婦さんの顔がその事故で切り傷だらけだったとしたら・・・
あの車椅子に乗ってた人が自殺した子だとしたら・・・・
俺は正直恐い

続く