[廃鉱からの発掘品]
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とにかく春が待ち遠しくてたまりませんでした。
日々降り積もる雪をこんなに恨めしく思ったことはありません。
夢ではあの木造校舎の中で、現では視界の片隅で、という形で
あの子が私を解放してくれることはありませんでした。
私は日々衰弱して行きました。

幸いなことにその年は道内各地で例年よりも雪解けが早く進みました。
おかげで4月の下旬には私はあの地へ向かうことができました。
でも、もう遅すぎたのです。
あの炭住も炭鉱会館もすっかり取り壊され、その跡は更地になっていました。
地元のお寺で供養してもらおうとも考えましたが、
集落の菩提寺はとうの昔に廃寺となっていました。

私は発掘物を元に戻すすべを完全に失っていました。
札幌の向かう列車の中で、私はこれまでのことをぼんやりと思い起こしていました。
不思議なことに、あの子の姿が私の視界に現れることはもうなくなっていました。
そのうち、例の寄せ書きノートをまだしっかり読んだことがないのに思い至りました。

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酷い寄せ書きでした。
クラス全員がその子を「首なし」と呼びつけ、
そして「中学では一緒のクラスになりたくない」だの
あるいは「中学には来るな」だの
そんなことばかりが書いてあるのです。

読み進むうちに、あることに気づきました。
寄せ書きを記した子供の名前に赤鉛筆で二重線が引いてあり、
その脇には1985.1.12のような年月日が付されているのです。
子供によって年月日はばらばらですが、ごく最近のものもあります。
「何だろう、これは?」
そう考えていくうちに強い不安がよぎりました。
「まさか俺の名前はないよな?! おいおい!!」
残るは最後の1ページです。
思い切ってめくりました。

そこには、二重線が引かれた私の父親の名があり、
脇には、その日の年月日が記されていました。

以上で終わりです。
Tenho que dizer tudo isto e uma ficcao e nao tem nada a ver com as pessoas existentes


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