[呪いの暴走]
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「あれはいったい何なんですか?」
境内のそばにある電灯の明かりで、おっさんのサングラスが怪しく光る。

「誰にも言わないと…約束できるか?」
「え?どういうことです?」
「約束できるのか?できないのか?どっちかと聞いているんだ。」
「どうせ今日あったことなんか言っても誰も信じてくれません。だから僕…誰にも言いません。約束します。教えてください。」

サングラスで分からなかったが、真剣な目で僕を見ているのが分かった。
タバコに火をつけ一服すると、おっさんは話してくれた。

すっごい複雑な話なので、各々の名称を読みやすいようにアレンジし、簡略化したものを書いておきます。

昔、ある豪族に代々仕える一族がいたそうだ。
一族は2つのグループに分かれており、結界などによって病気や災いから味方を守る祈祷師グループと、呪詛などによって敵を滅ぼす呪術師のグループで、互いに対立し合う関係だった。
その一族の助けもあって、豪族も栄えることが出来たので、一族の有力な人物には、褒賞として位を授けたり、領土を与えたりしたそうです。
そのため、呪詛によって勢力拡大に貢献することが出来る呪術師グループは、どんどん成長していきました。

そんなある日、その豪族の長が病に倒れてしまいました。
当時、病は悪霊による仕業と考えられていたので、豪族は祈祷師に助けを乞いました。
祈祷師グループにとっては手柄を立てる、またとない大チャンスです。
莫大な恩賞を交換条件に引き受けました。
しかし、何か見えない力に邪魔されているのか、なかなか思うように事が進まなかったそうです。
そこで、祈祷師グループのリーダーだった青年が長を看病し、残り全員がその周りを囲んで結界を張るかたちをとりました。
祈祷師たちはその間、その場から一歩も動かず、何日も飲まず食わずのままで耐えていたそうです。
そのかいもあってか、ようやく悪霊が長の口から出てきたのだが、青年はそれを見てギョッとしました。
悪霊の正体は呪術師グループのリーダーだったのだ。
よりによって長が一番信頼を寄せている人物が、長を憑り殺そうとしていただなんて…。内乱を避けたかった青年は、口が裂けてもそのことを長に言わないことを決めました。

手柄を認められ、褒美に位と領土と豪族の末娘をもらった祈祷師グループは大喜びでした。
祈祷師のリーダーと末娘は契りを結び、祈祷師グループは念願だった豪族の仲間入りを果たすことが出来ました。
やがて2人の間には子供も生まれます。
それを苦虫を噛み潰した表情でじっと見ている呪術師グループ。

あの一軒の騒動で危険視されたため呪術者たちは、位も領土も片っ端から剥奪されていきました。
続く