[エスカレーターの母娘]
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そしてそれを聞かされあと、俺は留学を取りやめ、
完全帰国することを打ち明けた。
すると、「実はもう一つ黙っていたことがある。」といい
「俺も見たんだ、実は。」
そう続けた。「彼女の言っていた母親と子供を見た。」
そうも言った。いきなり言われたもんだから、信じれなかったが、
「俺もそれ以来ずっと付きまとわれている。」
「それからあのエスカレーターのブーンとか言う変な音も。」
そう言うと、いきなり怖い顔して俺にこう言った
「日本に帰るまでどんなことがあってもあのエスカレーターに近寄るな。」
帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、飛行機のチケットを手配し、
逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、
帰る前に、彼女との思い出の場所やらなんやらを一通り巡った。
その国での最後の夜に、ちょうど2時過ぎ頃、彼女が丸窓を覗いた頃、
エスカレーターがブーンと鳴り始めた。
友人の忠告も無視して、俺は覗いた、しかもずっとそのエスカレーターが
止まるまで見続けた。
なにもない。なにもいない。
この話は、ここで終わる。俺は幸いその親子に付き纏われずに
日本に戻り、普通に仕事をして暮らしている。
ただ、この話には一つだけ今でも俺を悩ませている事がある。
それは実家に着くと俺宛に届いた画学生の友人からの一通の
手紙である。
そこには今から自殺すると言うこと、探さなくて構わないということ、
そして…
俺が彼女と付き合っている間に、彼女をレイプしたらしい。
そして、それ以来段々と彼女がおかしくなったと言うことが書かれていた。
それを読んだとき、俺は彼女が俺宛に遺した手紙を引っ張り出した。
最後のどうしても読めなかった一文をやっとその時読むことが出来た。
「こめんなさい、本当にごめんなさい。」