[マリツキ]
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お通夜、お葬式、両方とも参列しました。
お母さんは一気に20歳くらい歳をとったかのように老け込み、
お悔やみの言葉にもウツロな眼で力無く頷くだけでした。
 あの日、いつもの時間にお母さんが帰って来ていたら・・・。
 あの日、幹線道路が道路工事なんかしていなければ・・・。
 あの日、私の家側でなくアパート側で遊んでいれば・・・。
いくら悔やんだって、ちーちゃんは帰っては来ません。

 それから、しばらくたった蒸し暑い夜の事です。
寝苦しさに目を覚ました、その時です。身体が動かせない事に
気付きました。『ああ、これが金縛りか。』そんな事を考えていると
網戸だけ閉めた窓の外でマリを撞いているような音が・・・。

 ポンッ!・・・ポンッ!・ポンッ!・・ポンッ!・・・ポンッ!・・・

『何か変だな?』妙な違和感を感じていました。そのうち、音が移動した
様に感じました。今度は明らかに部屋の中で聞こえています。
ベッドでなく畳の上に布団を敷いて寝ていたのですが、その足下辺り
から聞こえてきます。
 
 ポンッ!・ポンッ!・・・・ポンッ!・ポンッ!・・・ポンッ!・・・

不思議と怖さは感じませんでした。『ちーちゃんがお別れを言いに来たんだな。』
そんな風に思ったんです。その時、ずっと感じてた妙な違和感の正体が
解りました。マリの弾む音がリズミカルじゃないんです。
あんなに上手だったのに・・・。

 ポンッ!・ポンッ!・・ポンッ!・・ポンッ!・・コロッ・・コロコロコロ・・

失敗しちゃったみたいです。足下で撞いていたマリが顔の横まで
転がってくるのが解りました。取ってあげようとしたのですが
相変わらず金縛りで動けません。その時、転がってきたモノが・・・。
  「お兄ちゃ〜ん、遊ぼぅ〜!」って・・・。

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