[失った物と得た物]
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それから俺達二人は、まわりの人間に力を悟られないように生活した。
今井田は生まれたときから力をもっていたようなので、全くもって平静だったんだが
俺はそうもいかなかった。昔から幽霊なんか全然怖くなかった。
幼稚園の時、バタリアンをみながら眠りについていたほどだ。死霊のしたたりも心地よい睡眠を誘ってくれた。
しかしそんな俺でも鬱病や自律神経失調症、下痢、便秘、水虫、脱糞などを同時併発してしまった。
それほどリアルの幽霊達はシャレにならなかった。

ある日自室でオナニーをしていて、ふと横を見ると第二次世界大戦中に戦死した兵隊達が俺を傍観しているのだ。
約60人ほどの大隊を組んで俺を見るものだから、恥ずかしくなって行為を中断せざるをえなくなる。

歴史の勉強をしていて、年号を必死でおぼえていると、背後にいたかっぷくのいい女子大生が
「1987年 10月23日 学校の教室にて西田洋平に弁当箱にゴキブリを入れられる。
 1987年 11月2日  体育の授業中、中島由紀にブルマを隠される。
 1987年 11月5日  放課後、数学の横島先生から殴る蹴るの暴行をうける
 1987年 12月13日 下校途中、数人のクラスメートから凍った池の上を歩かされ、池に落ちて凍傷になる。」

などと、自分の不幸の記録をつぶやき続ける。おかげで俺が覚えた年号は彼女の不幸の記録だけだった。
ちなみにテストには全く出題されなかった。

別のクラスの友人と会話しているとき、その友人にとりついていた自縛霊が、友人を陥れるために
友人の人には言えない内緒話を惜しげもなく話してくれた。
俺に被害が及ぶような性癖をもっていた友人に、二度と話しかけることはなかった。

俺は幽霊が見えるようになったおかげで、まともな生活が送れなくなっていた。
今井田はそんな俺を励ましてくれていた。だが、そんな励ましじゃ足りないほどのストレスが俺を襲う。
このままでは、俺も幽霊の仲間入りをしてしまうんじゃないだろうか。そう思い始めていたとき、
俺はあることに気づいた。そうだ、幽霊を殺そう。周りにいる幽霊を退治すればいいじゃないか!
幽霊を退治してまわれば、商売になるよな・・・この就職難のさなか、俺は究極の資格を手に入れたんじゃないか!?

そんなこんなで、幽霊退治サービスはじめました。 END


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