[幽霊団地]
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まあ、そんなわけで、僕は仲良かった友達、半田と連れ立って、
メンマの団地に遊びに泊まりに行くことになったのだ。
チャリンコを押しながらのんびり僕らは、メンマに色々聞いてみた。
「最初はなにもなかったんだよ。なんか気持ち悪い部屋だなあ、とかは思ったけどさ。
でももうすぐ新しい家も立つし、3ヶ月くらいだからいいかなって思ってた。
そしたらさ、一週間くらい前から・・・」
メンマはノリノリで話し出した。たぶん、本当は怖かったんだと思う。
でもみんなが自分に注目しているし、夏の明るい日の下では、そんな話も怖くなかったんだろう。
調子に乗って話し出した。
「こないだの夜さ、なんとなく目が覚めたんだよ。時計見たら1時過ぎだったかな。
なんか変な時間に目が覚めたなあと思って目をつぶると、となりの部屋でなんか音がするんだよ!
ズル、ズルって。畳の上をなんか引きずってるというか、這っているっていうか」
半田「うおおおおおおおお」
僕「怖え〜〜〜〜! すげー怖えええええ!」
僕らはケタケタ笑った。メンマはなんだか得意げだった。
5棟団地。団地郡の隅で、僕の家からは遠いかったので、ここにくることは実は2回目だった。
だって実際怖かったしさ。
団地の五階は、すべてベニヤか何かで目張りしてあった。
飛び降り防止なんじゃないかな。近くの団地にすむ半田が言った。

すいません、まだまだ長いんですか投下いいんですかね?

団地にはエレベーターとか贅沢なものはついていなかった。僕らは狭い薄暗い階段を上がる。
やべっ、もうこの段階でなんか怖いぞ!
さっきまで明るい日の下で笑いあったくせに、僕らはもうビビリ始めていた。
なんたってここは、本にも載る幽霊団地なのだ。その事実を僕らは改めて思い出した。
だけど何も言わず、僕らはもくもくと上り始めた。だってメンマが実際にここに住んでるのに
「気持ち悪いとこだな」とか言えるわけがないじゃないか。だって友達なんだから。
「ここ」
メンマがドアを開けて僕らを案内した。古くさび付いた緑色のドアは、嫌な音をたてて開いた。
部屋の中は、嫌に薄暗く、狭苦しく感じた。違う棟に住む半田の部屋と同じ間取りだったけど、
あっちはもっと明るくて綺麗で広かった・・・
部屋の中には、すごい古い箪笥とか食器棚とかが置かれていた。
なんでも前の住人が置いていった家具が、そのまま置かれていたらしい。
どうせ新しい家にすぐ引っ越すし、4階のここまで荷物を運び込むのもアレなので、
そのまま自分たちが使うことにしたらしいけど・・・
僕は思ったものだ。ほとんど誰も住んでいない団地。前の住人って、何年前の住人なんだろう?
「なあなあ、カセットレコーダーとかない?」
半田がメンマに聞いた。
「あるよ」
「おれ、カメラ持ってきた。ラジカセはさすがに重かったからさ。その、ズルズルって音、録音しようぜ!」
僕とメンマは半田の準備のよさに関心した。
「すげー!なんか写真に写ってたらどうするよ!」
「おれら有名人だぜ、すげーーー!」
「よし、とりあえず記念撮影だ」
ぱしゃり。
そのあとも、僕らは部屋中をあちこち写真に写して回った。

初めは気味悪かったこの部屋も、3人で騒いでるとちっともそんな気持ちはなくなった。
メンマのお母さんの作りおきしてあったカレーを食べて、テレビアニメを見ながら
僕たちは、夏休みの計画を立てたり、マンガの話をしたり、
好きな女の子を打ち明けたりして盛り上がった。

「あのさ、女の体の、どこを触っても見てもいいって言われたら、お前ら上と下、どっちにする?」
「そりゃ下だろう」
メンマの質問に、僕と半田は即答する。
なんたって男と女の大きな違い、女の○○○は小学生ながら大きな興味の対象なのだ。
そんな僕らにメンマはバカにしたように言う。
「バカだなあ。女にはなんにも生えてないんだぜ! 何にもないんだから見ても触っても面白くないじゃん。
上にきまってるだろ! おっぱいだろ、おっぱい! やわらけーぜ〜〜〜〜? きっと!」
熱く語るメンマ。・・・言われてみれば確かにそうだ!
今の自分なら、「そんなことないぞ」と彼らに言い聞かせてやることも出来るのだが、
なにしろ当時の僕たちはガキだったのだ。
「そうか! じゃあおれもおっぱい!」
「僕もおっぱいだ!」
「だろだろ? おっぱいだよな!」
「すげーよ! すげーよメンマ!」
僕らはメンマの博識に、えらく感心したものだった。
とまあ、そんな感じで盛り上がり、とりあえず寝るかと誰かが言い出したのは12時を回っていた。
あ、ちなみにこの日は土曜日である。

続く