[恋人の幽霊意]
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「俺が一体何をしたと言うのだ、彼女に対し、何か酷い仕打ちをした訳でも
無い、自分なりに誠意を持って接していた、ただ彼女の思いを十分に受け取れ
無かったと言うだけで、なんでこんな目にあわなきゃならいんだ」
事実私はあの無言電話が掛り始めてから今日までろくに仕事も手に付かず
ミスをし続け、そして今日商談を一方的にキャンセルする事となり、少なから
ず自分の信用を失ってしまいました、そしてここ最近ろくに眠れず、食欲も無
く周りから、「一体どうしたの何があったの」と言われる程やつれていまいま
した。しかし本当は恐がりなのに日頃からタフさと豪快さを売り物にしている
私は到底、幽霊に悩まされているなどと人に相談できず、またそんな事を打ち
明ける友人も無く、精神的に追い込まれ続けて来ました。
酒とは場合によっては偉大な物で人の身を破滅させる事があるのは衆知の事
ですが、酒が人を救ってくれる事もあるのです、酔いが進むに従って恐怖は
完全に消え、怒りが開き直りと、居直りに変わって来ました、
「くそー、来るなら来やがれ、失恋程度で死ぬなら、どっちにしろこの先生き
て行ける訳、ねえじゃねいか、それで勝手に人を怨んでも知るかよ、俺には何
の非も無い、クソー、出て来たらぶっ殺してやる、しかしもう死んでんだから、
これ以上殺しようがないよなー、死んだ者をもう一度殺すにはどうすればいい
のかなー」朦朧とする頭で訳の分ら無い事を考えて居るう内に酒量が自分の許
容量を超えたのか、頭が渦巻きの様にグルングルン揺れるのを感じ、猛烈に気
持ち悪くなって来ました、トイレに行き吐き、洗面所で顔を洗っていると、不
意に後ろに冷たい物を感じ鏡を見ると、なんと私の後ろに私の顔の2倍位の彼女
の真っ青な顔があり恨めしそうにみているじゃないですか、強烈にゾーッとし
た物の、それでも酔いが醒めないくらい泥酔していた私は、「失せろ、」と怒
鳴り振り向き様後ろを殴り付けました、当然なんの手応えも無く彼女の顔は消
えています、寝室に戻った私は、少し醒めた酔いを補充すべく、速いピッチで
酒を煽り続け、本当に訳が分らなく成る程に更に泥酔して行きました、煙草に
火を付けては置いて、また次の煙草に火を付け、灰皿に煙の立つ煙草を4、5
本ならべ又新たな煙草に火を付けたその時、突如部屋の電気とテレビが消えた
のです、天井から「酷いじゃないのー」と言う彼女の声が聞こえ、空から舞い
降りるように、私の目前に彼女が降り立ったのです、

続く