[恋人の幽霊意]
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次の日私はよほど電話を捨てようかと思ったのですが、そんな事を
すれば、もっと酷い目に会うような気がして、彼女の霊が乗り移って
いると思われるその電話をアパートの下の駐車場にある自分の車の
トランクの中に押し込めてから寝ました。当然、眠れる訳がありません
、しかしここ数日の寝不足で身体は疲れきっていますなんとか眠るよう
に努めていると問題の午前3時が近づいてきました、そして3時ウトウトと
していた私は聞こえるはずも無い下の駐車場の私の車のトランクを中
から”コンコン、コンコン”と叩く音が聞こえて来るではないですか、
ハッとして完全に目が覚めてしまった私は身を起こそうとしましたが
そのとたん俗に言う空縛りになってしまったのです、空縛りは非常に
身体が疲れている時、頭よりも先に身体が眠ってしまうか、頭が目覚めた
のに身体が目覚めない為に起こってしまう現象である事は知っていた
いて、今まで何度も空縛りになった事がありますが、不味い時になって
しまいました、指でも何処でも身体の一個所に神経を集中させそこを
ピクリとでも動かすと解けるので、なんとかその方法で解こうと試みた
のですが全然解けません、その間もトントンと言う音が続き、そして
聞こえるはずのないトランクの中から、彼女の声が、かすかに聞こえて
来ました「寒いよー、寂しいよー、ここに来てよー、私と話をしてよー」
繰り返し、繰り返し執拗に言い続けます「ここから出してよー」
私は声も出ないので心の中で「嫌だ、絶対に嫌だ」といい続けました
すると「なんで来てくんないの、なんで!!じゃあ私から今から行くよ」
彼女がトランクから出てアパートの下に立ったのが何故か分かりました
そして2階の私の部屋に向け階段をゆっくりと昇ってくる音が聞こえます、
トン、、、トン、、トンと「許してくれ、頼むから許してくれ」と心でいい続
けたのですが彼女は階段を上り詰め二階の通路を引きずるように歩きとうとう
私の部屋の入り口に立ったのです「開けて、早く開けてよ」、ドアをトントン
と叩き続けますそしてか弱い声で「なんで開けてくれないの、なんで入れ
てくれないの」 「頼むから許してくれ来ないでくれ」と念じ続けたのですが
「駄目、開けてくれないなら、自分で開けるよ」やがて、鍵をしているはず
のドアがガチャと開く音がして玄関からキッチンへ彼女が入って来ました
キッチンを引きずるようにゆっくり歩きとうとう寝室のドアの前に立ったの
です、「さあ、中に入れて、早く」 「俺が悪かった、悪かった、だからもう
許してくれ、頼むから来ないでくれ」私は必死に念じ続けました、しかし
彼女はドアの前でか弱い声「何が悪かったで言うの、私がこんなに
好きだったのに、貴方は答えてくれなかった、そして最後は逃げた、
そして今は私を追い出そうっていうの、私はそう言うのが....」
急に声が大きく、強くなり、そして私の枕元で「許せないのよ!!」と
聞こえ不意に私の頭の真上に彼女が姿を現したのです、全身ずぶ濡れ
で、顔は真っ青でむくんだ様に膨れ上がり、そしてその顔の半分以上が
紫に腐食し肉がズブズブになり、一部骨まで見えています、両目だけが
異様に青白く光り憎悪のこもった目で私を見降ろしています、私は生涯で
これ以上おぞましく恐ろしい物は見たことも無く、また将来絶対見たくあり
ません、正に全身が凍り付き、脳味噌が破裂したような感じです、目を
閉じてもなぜか、その姿が消えず逆にはっきり見えるような気さえします
続く