[たっちゃんとやばい仲間たち]
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私は自分の唇に人差し指をあて(シー)と合図をして祖母に手招きをしました。
祖母が私の隣に横になりました。
私は祖母に耳打ちで

「複数の子供の足音が聞こえる。何か変だよ」

と言いました。   
祖母と2人で耳を澄ませて台所の様子を伺いながら数分が経ったと思います。
さらにガヤガヤとうるさくなりました。

祖母がそっと起き上がり、かがんで台所のガラス戸のところまで行きました。
私も祖母の後を追い、ハイハイするような格好でガラス戸のところまで行きました。
祖母が数センチ、そっと戸を開けました。
するとーーーーーーーーーーーーーーーーー

台所に6人子供がいて大きな子2人が楽しそうにテーブルにお皿やらコップやらをセッティングしていました。
年の頃は小さい子で3歳くらいから。大きい子で8〜10歳くらいだったと思います。
いきなり祖母が立ち上がりガラス戸を思いっきりガラっと開け

「あんたたち、どこの子ね? 夜中によその家で何しとるね?どこから入った?」

と、大きな声で言いました。
子供達はギロっと祖母と私を睨むとスーッと消えてしまいました。

祖母の声で祖父、両親と兄夫婦が起きてきました。
私は兄に

「子供が6人台所にいて消えた」

と言いました。

最初は皆口々に「寝ぼけたんだろ」とか「夢でもみたんじゃないの?」と言い、信じてくれませんでした。
しかし、朝、台所の食器棚とテーブルの上に置かれたコップに無数の大きさの違う子供の手形が残っているのを発見し、
皆、私と祖母の話を信じてくれました。
朝食の後、私はMちゃんに

「たっちゃんの絵を描いて」

と言いました。

Mちゃんはお気に入りのクレヨンセットでチラシの裏に絵を描き始めました。

「たっちゃんだよ」

と、出来上がった絵をMちゃんは誇らしげに私に見せました。
その絵を見てハッとしました。
Mちゃんが描いた「たっちゃん」が着ていたTシャツの色。
青いTシャツ・・・・・
昨夜、台所にいた子供達の中にMちゃんより1〜2歳年上だと思われる男の子が
青いTシャツを着ていたのです。

(そういえば・・・・・・・・・)

真冬なのに子供達は皆、真夏の格好をしていたのを思い出しました。

祖母にMちゃんの描いた絵を見せ、台所にいた子供達の服装のことを聞くと
服装や顔までは覚えてないと、祖母は言いました。
でも、最後に子供達が私たちを睨んだ目は覚えていると。

「なんだか気味が悪かったよ。全員死んだ魚のような目だった」
それから数週間が過ぎ、兄夫婦の家であったことも忘れかけた頃のことです。
会社帰りに同僚と近くのデパ地下へ寄りました。
エスカレーターで地下へ下りている最中、後ろからふくらはぎに何かを刺されたような鋭い痛みを感じ、振り返ると
私のすぐ後ろのステップに5歳くらいの男の子が焼き鳥の串を手に持ちしゃがんでいました。
私と目が合うとニヤっと笑い、もう一度ふくらはぎに串を刺しました。
「何してるのよ、痛いじゃない」と男の子に言うと同時にエスカレーターは地下につきました。
子供の親に一言言ってやろうと、私はエスカレーターを下りた場所で止まりました。
後から後から人が下りてきて、時間帯にも混雑しているときだったので子供を見失ってしまいました。
ふくらはぎを見ると、少し血が出ていました。
気を取り直して同僚と試食品などを食べながら地下を回っていると
視界にちょこちょことさきっきの子供が入ってくるのに気づきました。
ふり向くと子供がいません。
何度となくそのようなことがあり、パン屋さんの前に来たとき
また子供が視界に入りました。
私は気づかないフリをしながら、視界の角に映る子供を目で追いました。
子供がだんだんと私に近づいてきました。
私はパン屋さんの壁に鏡がかかっているのを見つけ、鏡のななめ前に立ちました。
鏡に子供が映った瞬間、一旦、目をそらし、そのまま勢いを付けて後ろを振り返りました。
そるとそこにはさっきの子供が右手に串を持ち立っていました。
私はその子の腕を掴んで

「あんた、大人をバカにしてるんじゃないよ。親はどこにいるの?」

と凄みました。

すると子供の力とは思えないほどの力で私のてを振りほどき、走って逃げて行きました。
同僚にどうしたのかと聞かれ子供のことを話したら、どんな子供か聞かれました。
そういえば・・・・・
子供は半ズボンに白いランニングシャツを着ていました。
デパートの中とはいえ、真夏の格好。
私はクリスマスの出来事を思い出しました。

続く