[恐怖の一夜]
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私が「今でもその幽霊出るの?」と聞くと彼は「毎日夜になると練習してるよ」と言いました。
友達カップルの彼女が「怖くないの?」と聞くと
彼は「もう慣れた。練習の邪魔をしなければ何も起こらないから大丈夫」と言いました。
ここからが後悔したことなのですが、
よせばいいのに私は「じゃぁ、今夜みんなで武道館に寝たら幽霊が見れるの?」と聞くと
彼は「音や気配が聞こえても騒がずに寝たフリをしてれば問題ないだろう」と言い、  
夜12時を回った頃、剣道場全体の電気は付けられないので
デスクライト1つと厚手の大きな毛布を2枚持って4人で武道館に行き、
毛布を敷いて雑魚寝で寝転がりました。 

広い剣道場の真ん中にポツンとランプが灯りしばらく経つとボワ〜〜〜〜〜っと
剣道場全体がほのかに見渡せるくらい目が慣れてきました。
剣道場の入り口から柔道場が少し見えました。
私は怖くなって彼にしがみつきそのままウトウトしてしまい
私の隣に寝転がっていたカップルの彼女の震えの振動で目が覚めました。
「ドス、ドス」と、柔道場から音が聞こえてきました。 私は怖くて目をつぶりました。
私の隣で震えていた彼女は私の腕を毛布の中で掴みさらにブルブルしていました。
私は目をつぶって毛布の中で彼を指でつつきました。でも彼は反応しません。
音が剣道場に入ってくると人の気配を感じました。私は目をつぶりながら彼女と抱き合ってブルブルと震えました。
私はなぜか亡くなった男子生徒が私たちの事を怒っていると感じ、心の中で
(ごめんなさい。ごめんなさい。許してください)と何度も祈りました。

『ドス、ドス」という音がいつしか足音に変わっていました。
足音は私たち4人が横たわっている回りをゆっくりと何度も回っています。
どのくらい経ったのでしょうか?多分、1分も経っていなかったと思います。
その時、私は気づいてしまいました。
私たちの回りをゆっくりと歩いているのは1人ではなく複数であることを。
その瞬間、カップルの彼氏が「うわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」と大声を上げ
起き上がりバタバタと外へ出て行ってしまいました。
とにかく私は彼の言いつけのとおり、声を出さずに寝たフリをしました。
彼女も同じだったと思います。  
しかし、足音は一向に消えずさっきよりも確実に足音が増えているのがわかりました。
耳を澄ますと「は、は、はぁ・・・」と息づかいが私の顔に近づいてくるのがわかりました。
恐怖心がMAXになった時、震えながら抱き合っていた彼女が「あがっ、あがっ、うぎゃぁぁぁぁ・・・・・」と
変な叫び声をあげました。 私は彼女の声で驚き目を開けてしまいました。
すると彼女の上に黒い男が乗っかっていて、その男が彼女の上から乗り上げるようにして私に顔を近づけていたのです。
ライトの光で横たわっている私たち3人を大勢が丸く囲っている様子が一部見えました。

続く